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越中流 第1部 先用後利はいま

13.生き残り

三九グループの傘下に入ったことを示す看板を、感慨深げに見上げる東亜製薬社長の西本さん=上市町若杉

三九グループの傘下に入ったことを示す看板を、感慨深げに見上げる東亜製薬社長の西本さん=上市町若杉

「こんな話、二度とない」 中国企業傘下で再生

 富山地方鉄道上市駅から細い路地を一本入ると、配置薬メーカーの東亜製薬(上市町若杉)の正門が見えた。白地に青で「999 三九グループ」と書かれた看板が目に入る。同社が中国の製薬大手「三九企業集団」の一員であることを示す看板だ。社長の西本初博さん(55)は「あの買収話がなかったら今ごろ、うちの会社はなかったかもしれない」と看板を見上げた。
 東亜製薬は平成十五年十月、三九企業集団に買収され、子会社となる道を選んだ。

 「赤字でもないのに、なぜだ」「配置薬を捨てる気か」「どうして中国の企業なんかに…」
 同年九月に東亜製薬本社で開かれた臨時株主総会。経営陣が切り出した買収提案に、株主の不満は爆発した。
 同社は昭和十七年、配置薬メーカーが統合する形で誕生した。八人の役員に加え、株主の多くも配置薬業者(販売員)だった。一方、西本さんは生え抜きの七代目社長。反発は当然だった。「こんな話、もう二度とない」と訴える西本さんの声は届かず、買収提案はあっさり否決された。
 西本さんは、配置薬業界と会社の将来に強い危機感を持っていた。縮小する市場に後継者不足。業界が抱える問題とともに、同社もここ十年は売り上げが伸びず、改正薬事法が求める設備や人員の投資も満足にできていなかった。「廃業も時間の問題」とあきらめていた矢先の買収話だった。
 三九側は同社の生薬技術を高く評価し、配置薬の継続と雇用確保などを約束してくれた。西本社長は株主一人一人に「会社が生きるか、死ぬかだ」と粘り強く訴えた。否決から一カ月後の定時株主総会で、買収提案は賛成多数で可決された。

 あれから三年目の夏を迎えた。三九グループ東亜製薬は今も変わらず、風邪薬「葛根湯(かっこんとう)」などの配置薬を製造している。割合は六割から二割程度に減ったが、その分、三九ブランドの漢方薬や生薬由来のサプリメント(健康補助食品)の製造が増え、国内のドラッグストアなどで販売が伸びている。本年度の売上高は前年度より倍増し、七億円になる見通しだ。「おかげさまで忙しくて」と額の汗をぬぐう西本さんの表情が輝いて見えた。
 一時は廃業まで考えた東亜製薬が、中国企業の傘下に入り、将来に活路を見いだしている。
 「配置薬メーカーとして生き残るためには、買収を受け入れる以外方法がなかった。一番変わったことは将来に希望が持てるようになったこと。私も、従業員も、配置薬業者も」
 かつての東亜製薬と同じように、配置薬の行く末に不安を感じている中小メーカーは少なくない。「先用後利」はいま、グローバルな経済のうねりの中にさらされている。


メモ:県内の配置薬生産額
 平成16年の県内の配置薬生産額は、前年比6・2パーセント減の231億1700万円(県くすり政策課調べ)。5年で2割近く減少したものの、全国シェアは5割以上を占める。一方、医療用、一般用を含めた全医薬品の生産額は、前年比3・5パーセント増の2549億5100万円で全国8位となっている。

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