立山・黒部 世界へ発信
第4章 新たな一歩・登山道整備 北日本新聞 7.2.....N0.75
 中部山岳国立公園の立山・黒部地区で本年度から五年間かけ、登山道などを補修する新規事業が始まった。環境省が立山黒部環境保全協会(会長・金山秀治立山黒部貫光社長)に委託して実施する「国立公園等民間活用特定自然環境保全活動(グリーンワーカー)事業」だ。これまで山小屋などが整備していた一般登山道の維持管理を国の予算で初めて行う。

 環境省は同事業で、全国の国立公園など二十七カ所に計一億円を計上した。県内は黒部峡谷の仙人谷から阿曽原間に三百五十万円、立山の地獄谷に五十万円が配分され、九月ごろから登山道の簡易な補修や標識整備、パトロールなどを行う。

黒部で初の国費事業
 これまで環境省や県が行う登山道整備は、立山の室堂など利用者が集中する地区に限られ、黒部峡谷や剣岳周辺など深い山域での整備は、山小屋や地元団体などがほとんどボランティアで行ってきた。黒部峡谷で阿曽原温泉小屋を経営する佐々木泉さん(41)は今年二月、宇奈月町であった北アルプス山小屋協会の総会で「道がよくなれば、事故は確実に減る」と登山道整備を訴えた。

 剣岳方面から黒部峡谷に向かう途中の仙人池と阿曽原間の登山道には、雪渓の危険個所があり、平成九年の夏山期間中には八人が遭難した。う回できる登山道を新設する以外に抜本的な解決策はない。佐々木さんは登山者が通行するとの連絡を無線で受けるたびに、山小屋から約一時間半かけて現地に出向き、登山者に安全な足運びなどを指導している。

黒部峡谷・下の廊下の白竜峡。置くにスノーブリッジができ旧日電歩道を遮っている=昨年10月


 佐々木さんは「国や県に登山道整備を再三求めてきたが、進んでいない。登山道を整備する主体が国なのか県なのか、あいまいなのが問題だ」と話す。公共事業での対応ができないのなら、登山者から入山料を徴収し、独自に登山道整備を行うことができないか、山小屋関係者とともに可能性を探っている。

 宇奈月町の欅平から阿曽原を通って黒部ダムに至る下の廊下の登山道約二十九キロ区間は、関西電力が黒四発電所の建設時に厚生省から示された許可条件の一つとなっている旧日電歩道の維持のため毎年数千万円をかけ補修している。

 通行可能期間は、残雪が消える九月下旬から十月までのわずか一カ月間。通行の最大のネックになっているのが、毎年巨大な雪渓に遮られる黒部別山沢と白竜峡の二カ所だ。ここに数十メートルのトンネルを整備すれば、七月から通行できるようになると指摘する山小屋関係者は少なくない。

 グリーンワーカー事業は予算規模が小さく、トンネル整備など本格的な工事には利用できない。宇奈月町の中谷町長は「日本に残された最後の秘境である黒部峡谷は本来、国が安全に登山できるよう整備するべきだ」と話し、同事業をさらに拡充して本格的な登山道整備にも利用できるよう求めた。