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第12章 飛躍のとき 立て坑エレベーター 北日本新聞2002.12.15.....N0.182
 宇奈月から黒部峡谷鉄道に乗り約1時間20分で、終点の欅平(599メートル)に到着する。欅平から黒部川左岸側山腹を垂直に200メートル上がる「立て坑エレベーター」は、関西電力が管理・運営している。これまでは建築基準法などの規制で、観光客ら一般の利用はできないとされていたが、平成9年の規制緩和で、法的な問題は、ほとんどなくなったことが分かってきた。
営業に法的問題なし
立て坑エレベーター
欅平と上部の展望台をつなぐ立て坑エレベーター


 エレベーターを降りた展望台(800メートル)からは、国内最大の高さ800メートルの大岩壁を誇る特別名勝・特別天然記念物の奥鐘山(1,543メートル)や、白馬岳(2,933メートル)など後立山連峰が姿を見せる。「立て坑エレベーターと展望台が利用できれば、欅平観光の魅力はぐんと高まる」という、宇奈月温泉など観光関係者の声は根強い。

 エレベーターは昭和12年、黒部川第三発電所の建築資材を運ぶため、旧日本電力によって造られた。発電所の完成(同15年)後、宇奈月温泉−欅平間(20.1キロ)は黒部峡谷鉄道として営業を始めたが、欅平と黒部川第四発電所をつなぐ関電専用鉄道(バッテリー式トロッコ列車、6.5キロ)やエレベーターは、今も利用が制限されたままだ。

 平成8年に関電と県が設置した「黒部川流域調査検討協議会」は、立て坑エレベーター利用の可能性について報告している。エレベーターの途中に出口がなく、故障や停止時に避難が難しいことなどが、安全運行を定めた建築基準法に引っかかるため、旅客営業は難しいと判断した。だが、関電北陸支社は「平成9年の規制緩和で、エレベーターの運行について、法的な問題はほとんどなくなった」と説明する。

 ただ旅客営業をする場合は、エレベーターに電源が1つしかないことが安全面での課題となる。実際に先月21日は、発電機の故障でエレベーターが途中で止まり、工事作業員ら22人が復旧するまでの約50分間、内部に閉じこめられた。新たに非常用の配電盤や変圧器などを整備するには「数億円のコストがかかる」という。

 関電は、もしエレベーターを使えるようにするなら、欅平からエレベーターの乗り口まで約500メートル続く工事用軌道のトンネルを安全に歩いてもらうため、トンネルの拡張も考えなければならないとする。エレベーターの旅客営業で、法的・構造上の問題はないが、今後は非常時と輸送の安全性向上にかかる施設整備が一番のネックになる、という立場だ。

 宇奈月町がつくる「黒部峡谷の保全・利活用研究会」は6月、県や黒部市などと合同でエレベーターを視察し、欅平の上部降り口から、既存の登山道を通って欅平に戻る回遊ルートの可能性を探った。参加者は「非常用電源などの課題はあるが、エレベーターを使えば、黒部峡谷の魅力が大いに広がる。関電側と十分に話し合い、利活用への課題をクリアしていきたい」と強調した。