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22 次隊受け入れ 2002.12.22
引き継ぎ準備 急ピッチ
 12月17日、昭和基地へ向けて砕氷航行中の南極観測船「しらせ」から昭和基地にヘリコプターが飛来した。予定より数日早い「第1便」である。次に越冬する44次隊の隊長や「しらせ」の艦長が表敬訪問にやってくる。私たち43次隊員は歓迎行事を準備して到着を待っていた。

 今年はトラックを並べてステージを作り、その上でドラム演奏(といっても、ドラムはないので空ドラム缶を並べての演奏)をした。ヘリポートには第1便が飛来する10分前に全員が集まった。時間がたつのを短く感じる南極でも、この時ばかりは10分間が長く感じられた。

 まして第1便はオングル島を2、3回旋回してからの着陸である。越冬中で一番長く寒く感じられた。しかしヘリコプターが近づくにつれ、隊員の中には自分の任期に先が見えた実感で涙する者もいた。

受け入れ準備に追われる43次隊
44次隊の受け入れ準備に追われる青いヤッケを着た43次隊。表情はみな明るい=昭和基地
 新鮮な食料、友人知人からの託送品なども運ばれた。食材は早速その日の夕食で食卓に出された。越冬中は冷凍品や乾物、缶詰がすべてだった食材はこの日をもって「生」となる。久しぶりに「千切りキャベツ」をはしで持った軽さや歯ごたえに驚き、しばらく食べられなかった生卵をごはんにかけて、そのおいしさに感動した。

 生みかんは冷凍ではないため歯にしみないし、生りんごは硬くサクサクしていた。新鮮な食材を食べ慣れている国内では到底考えられないだろうが、舌で感じるおいしさはもちろんのこと、体全体で新鮮な食材を味わう感動があった。

 18日午前、しらせは44次隊員のほとんどの人員をヘリコプターで昭和基地に運んだ。予定より数日早い44次隊の「昭和入り」である。「しらせ」は数日後にオングル島に接岸し、本格的な物資の空輸、氷上輸送が行われる。

 これから約1カ月半、昭和基地の人口は3倍に膨れ上がり、物資の受け入れ、自分の仕事や44次隊への引き継ぎ準備でますます忙しさは加速する。数日前まで静かだった基地が懐かしいが、いよいよ基地での生活も残りわずかだということを実感させてくれる。やり残した仕事はないだろうか。ここで悔いを残すことはできない。外ではあざけるように久しぶりに強風が吹いている。
木津暢彦南極地域観測隊員=富山市出身)

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