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23 昭和基地の正月 2003.01.12
ドラム缶で「除夜の鐘」
 南極観測船「しらせ」が運んできた郵便物は昨年末に届けられた。予想を上回る郵便の数である。小学生からの手紙は難問が多かったが、励ましの言葉やイラストなども書かれており、読んでいて心が温まった。小学生以外にも新聞を見た知人からの手紙も含まれており、懐かしく読ませてもらった。

 越冬交代準備で何かと忙しい昭和基地でも正月を祝った。日本の午前零時を迎えると、カウントダウンの模様をプロジェクターに映し出し、全員で見入った。だが、時差の関係で、昭和基地ではまだ31日午後6時である。少し遅れて、昭和基地内でも正月へのカウントダウンを行った。

 カウントダウンを盛り上げるにはやはり「除夜の鐘」が欠かせない。といっても昭和基地に鐘はないので、ドラム缶を広場前にクレーンでつるし、臨時の鐘をつくった。音にはあまり重みがないが、つくのは結構面白い。早々に年越しそばを食べ全員で「除夜の鐘」をついた。

“除夜の鐘”をついて新年を迎える隊員
“除夜の鐘”をついて新年を迎える隊員=昭和基地
 正月の過ごし方は、越冬した43次隊とこれから越冬する44次隊では異なる。昭和基地は、越冬交代の2月1日までは43次隊の運営となっており、44次隊は帰属する「しらせ」の中で正月を迎える。

 元日の昭和基地は43次隊のみで祝うことになった。おせち料理や酒などで正月気分を味わった。この日は1カ月ぶりの休日だったが、ほとんどの隊員が帰国へ向けて私物整理や月末の事務作業を行なっていた。正月の雰囲気は全くない。本当の休日は越冬交代が終わり、「しらせ」に帰艦してからかもしれない。

 越冬した43次隊には現在、風邪が流行りつつある。郵便物や物資と一緒に、「しらせ」に乗ってきた新しい細菌への抵抗力はなく、風邪はあっという間にまん延してしまう。毎年のことなので、通称「しらせ風邪」と呼ばれている。

 長い間、外界との接触なく生活してきたことや細菌自体が減少していることから、越冬中に風邪をひく者はいなかった。「しらせ風邪」でダウンする隊員をよそに、2日からは正月気分を味わう余裕もなく、物資の氷上輸送が続けられた。既に越冬交代まで1カ月をきっている。まだまだ残された観測は多く、「しらせ風邪」をこじらせているわけにはいかない。
木津暢彦南極地域観測隊員=富山市出身)

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