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正念場の地方自治 No.2 連載目次 前へ 次へ

第1部 暮らしと境界 中学校がない(下) 2003.01.04
 年の瀬が迫った12月26日朝、下村加茂中部の清原昇区長会長(66)は、署名簿を手に村役場に向かった。法定合併協議会の設置を直接請求する手続きのためだ。射水郡4町村に、新湊市を加えた射水広域圏での合併を実現しよう―。署名簿には、呼び掛けに応じた村民198人の名前が記されていた。

 広域圏では、経済人らでつくる射水圏政経懇話会が、早くから5市町村による合併に向けて動いた。だが、土井由三小杉町長が郡内4町村での合併を表明。懇話会は合併特例法の住民発議制度を使い、5市町村長が話し合いのテーブルにつくよう求めることにした。

 清原会長は、下村の請求人代表を引き受けた。直接請求に必要な33人分の署名はすぐに集まった。「発展への期待感があるのだろう。村の道路や施設はお隣さんに負けないけど、足らないもんもあるからねえ」

一人前の自治体に
効率行政より応分の負担
 中学を持たないことで、村は効率的な行財政を進められた。

 校舎には億単位の建設費がかかり、改修や改築の際にも莫大な支出を迫られる。事務職員の給料などに充てる中学校費は、下村より人口の少ない井口村で生徒1人当たり45万円、利賀村は50万円かかっている。

 村は、生徒を「委託生」として預けている富山市と小杉町に、1人当たり5万7000円を支払っている。両市町が負担する中学校費のほぼ半分で、芝田壮臣村教育長は「義務ではないが、お礼の気持ち」と説明する。さらに生徒が遠距離通学していることに配慮し、冬期間は約200万円の予算を組んでスクールバスを運行している。それでも生徒1人当たりの支出は、約10万円で収まる。

 村は農地が広がり、宅地造成や企業誘致がままならなかった。中学の運営を断念したのも、自主財源の乏しさゆえ。竹内昭英村長は「村を経営する上ではやむを得ない」と語る。そんな選択は奏功し、上下水道や道路などインフラ整備は県内トップクラス。下水道工事は、他町に比べ住民負担額が格段に安い。基礎的自治体の役割を放棄するのと引き替えに、手にしたものは大きかった。

§   §   §

 清原会長が署名活動を行ったのは初めての体験だった。「港や高速道、国道、鉄道などすべてのインフラを備えた自治体になれる」という射水圏政経懇話会の主張に共感したからだ。

 区長会長として小杉、呉羽両中学校の行事などに呼ばれることがあっても、ついつい発言をためらう。「応分の負担をしていないから、学校運営などについて言いたいことがあっても、大きな声は上げられない」

 合併で村名が消えることには確かに寂しさを感じる。これまでのような手厚いサービスは受けられなくなるかもしれない。「だが、借金だらけの国は、小さな村の面倒はもう見てくれない。国や周りの町村に頼らず、一人前の自治体になるには合併しかない」

 下村は「昭和の大合併」で、合併先をめぐって村内の意見が対立し、分村を避けるために単独の道を選んだ。今、村民からは、合併先や合併そのものに反対する声は出ていない。

署名簿を村選管担当者に手渡す清原さん
署名簿を村選管担当者に手渡す清原さん(右)=下村役場

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