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正念場の地方自治 No.4 連載目次 前へ 次へ

第1部 暮らしと境界 長い通学路 2003.01.06
 宇奈月町の愛本小学校へと続く長い道を、1年生の小森祐輝君(7つ)が歩く。周囲には田んぼが広がり、屋敷林に囲まれた農家が点在している。

 愛本新の自宅から学校までは2.8キロ。祐輝君の足で、50分近くかかる距離だ。途中、自宅から2キロほど離れた同級生の家までは、一緒に登校する児童がいないため母親の亜希子さん(34)が付き添い、祐輝君をせかすようにして歩く。

 「一人で歩かせるのは、かわいそうだから…」と亜希子さんはため息をつく。もっと長い道のりを歩いて通う児童は県内にも大勢いる。ただ亜希子さんがやるせなく思うのには理由がある。自宅から目と鼻の先に、お隣の入善町ひばり野小学校があるからだ。

隣町の学校 すぐそこ
合併論議で校区再編も
 愛本地区は扇状地の扇のかなめにある。中でも愛本新は山のふもとの入善町舟見集落に沿って、きゅう屈な形で長く深く、入善町に食い込んでいる。

 昭和29年の合併で旧愛本村は揺れた。今の宇奈月町をつくる3村の合併が決まったとき、愛本村内では、旧舟見町との合併を望む声も強かった。財政上の損得などから村議会の議決は真っ二つに割れ、最後は議長採決で、現在の枠組みが決まった。まるで舌のように長く伸びた愛本新の形はこのときにできた。

 祐輝君の家はその「舌先」にある。ひばり野小や舟見中を左手に見ながら、遠く離れた学校に通う日々。これまで通学路の側溝に2度落ち、地域の人に助けられて帰宅したこともあり、亜希子さんは「心配が募ります」とわが子に目をやる。風が冷たくなってからは、「冬場だけでも」と父親が、通勤時間を早めて車で学校に送っている。

§   §   §

 町は4つの小学校を1つに統合し、新しい学校を建設する方針を決めている。昨年12月から候補地の検討に入り、順調にいけば開校は平成18年4月。「仮に黒部川を渡った対岸側に学校ができると、児童はさらに遠い道のりを通うことになる。スクールバスを走らせても確実に不便になるでしょう」と愛本小PTA会長の大森崇督さん(48)は表情を曇らせる。

 独立して黒部市などへ出ていく若い世帯、歯止めの利かない少子化…。学年10人に満たないクラスが増えつづける以上、通学の不便を考えても学校統合は避けられない。しかし、同時に合併論議が、大きく動き出している。宇奈月町と、隣接する黒部市、入善、朝日両町の首長は昨年12月、合併に向けた準備会を早い時期に設けることで合意した。あとは滑川市に顔を向ける魚津市が、枠組みに加わるかどうかの結論待ちだ。17年3月の合併特例法の期限をにらんで協議が始まれば、現市町の境界を超えた校区の見直しもいずれ論議しなければならない。

 「歩くと、体が強くなる」「友だちがいる」。自治体に境目があることなど理解できない祐輝君は、遠くの学校に通う理由をそう話し、自宅の窓越しにひばり野小を見やった。亜希子さんは言う。「友だち関係を考えると、祐輝は統合された学校に通うことになる。でも、これから生まれてくる子どもたちは、やっぱり近くの学校に通うのが幸せだと思います」

通学路を歩く小森さん親子
通学路を歩く小森さん親子。自宅近くに隣町の学校(右)がある=宇奈月町愛本新

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