山田村の住民は、自宅から直接救急車を呼ぶことができない。119番すると、村役場につながってしまう。村職員が、隣接の婦中、八尾両町のどちらかの消防本部に連絡し、出動を要請する。自前の救急車がない上、細入、舟橋両村のように隣町と業務委託契約を結んでいないためだ。両町が要請に応じるのは「人道的な配慮」(婦中町幹部)という。
村の消防団員を務めていた小向さんは、時間ロスの生じる通報体制を知っていた。隣町から救急車の到着を待つのがもどかしい。しかも、村は救急車を出してくれた町に対し、10万円の「謝礼」を支払っている。「村に余計な負担をかけるのも気が引けてねえ」
こうした思いを抱くのは、小向さんだけではないようだ。村が昨年1月から11月末まで、両町に救急出動を要請したのは21件。人口千人当たりの出動要請件数は約10件で、婦中、八尾両町の半分にとどまる。
「昭和の大合併」で独立を貫いた村は、過疎債を活用し、下水道などのインフラ整備をいち早く実現。希望世帯にパソコンを配布し「電脳村」として全国に名をはせた。その半面、市町村単位が原則の救急業務は手つかずとなっていた。
財政負担の重さが理由だった。消防庁の試算では、救急車1台を維持する経費は年間約8千万円。交代要員の人件費を含んでいるものの、車両の更新など、実際の支出はさらに膨らむ。人口約2千人で、県内一自主財源の乏しい村では無理な相談だった。職員に中古の救急車を運転させる案や、隣接2町に働き掛けた救急業務の広域行政化も実を結ばなかった。
「肝心の役割を果たせず、これでは村が小さ過ぎると言われても仕方ない」。山崎吉一村長は、小村の限界を認める。「だが、それだけで行政のすべてを評価するような最近の風潮はいかがか」とも語る。小さいからこそ実現した施策は数多い、との思いがにじむ。
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