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正念場の地方自治 No.7 連載目次 前へ 次へ

第1部 暮らしと境界 福祉サービス(上) 2003.01.09
 「地方分権で仕事は増えている。小さな町村では手に負えないことが多いんですよ」。溝口進福野町長は、ため息交じりにつぶやいた。

 昨年11月末、小規模合併を主張した安念鉄夫砺波市長の翻意を促すため、砺波市を除く砺波広域圏の町村長とともに中沖知事を訪ね、砺波市が広域圏全域での合併に方針転換するよう、協力を求めたときのことだ。溝口町長は10市町村による大きな合併を目指す根拠として、消防やごみ処理といった広域行政の実績などを挙げたが、理由はそれだけではなかった。席を立つ間際、小さな町村が事務負担の重さにあえいでいることも付け加えた。「今度は精神保健だと言われても、地元には専門家がおらんのです」。溝口町長の言葉に、各首長は無言でうなずいた。

市町村が担う精神保健
新たな業務 戸惑いも
 戦後の地方自治制度のスタートに伴い、国は市町村に次々と新しい事務を担わせた。中学校の運営に始まり、国民健康保険や介護保険…。改正された精神保健福祉法が平成14年に施行され、県が担当していた精神保健事務の一部も市町村が手掛けることになった。

 隔離・収容が中心だった国の精神医療政策は昭和62年以降、社会復帰支援にシフトした。病院から地域社会へ−。精神障害者を支えるのは、住民に最も身近な市町村が担当するのが自然の流れだった。県から通院医療費の公費負担や精神障害者保健福祉手帳の申請窓口が移され、障害者へのヘルパー派遣なども手掛けることになった。

 「これから、仕事は大変になるなって思います」。福野町保健センターの保健師、井幡秋美さん(50)は率直に語る。

 井幡さんは昨年秋、精神障害者の家族を持つ住民から相談を受けた。住民は「仕事に出ている日中、家で1人きりにさせられない」と打ち明け、ホームヘルプサービスを申し出た。井幡さんはサービスに必要な手帳の申請を勧めた上で、週2回ずつ話し相手を務めるヘルパーの派遣を始めた。

 町ではこれが最初の仕事だった。「まだ慣れないから、県厚生センターの世話になっているんです」と井幡さん。サービス内容を決めるには、精神科医や本人を交え話し合う必要がある。利用者の心と向き合い、保健師が調整役となって支援方法を考えるが、知識も経験も十分とは言えない。これまでの相談は3件。「これから本格的に手掛けるには、職員にケースワーカーや精神保健福祉士がいると心強い」

 だが、人口約1万5000人規模では利用者は限られ、町の財政力で専門職員を雇うのも難しい。

§   §   §

 町は昨年末、砺波広域圏10市町村での合併を断念。砺波、庄川両市町を除く8町村で、人口約6万人の新市実現に向けて動き出した。県の協力は奏功せず、広域圏は二分されることになったが、溝口町長は「8町村で最大の合併効果を挙げればいい」と力を込める。

 モザイクのような砺波広域圏の境界を取り払えば、サービスの利用者は増え、少なくとも費用対効果の問題は解消される。しかし、行財政のスリム化には職員数の削減が避けられない。「それでも、専門性の高い職員は拡充しなければならない」と溝口町長は言う。相反する命題をどう両立させるのか、小規模町村に共通する課題だ。

会見する溝口福野町長(左から2人目)ら
8町村による合併に向けて会見する溝口福野町長(左から2人目)ら=昨年12月17日、井波町役場

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