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正念場の地方自治 No.8 連載目次 前へ 次へ

第1部 暮らしと境界 福祉サービス(下) 2003.01.10
 仕事始めの今月6日、木造平屋建ての小さな作業所で、60代までの男女10人余りが衣類の袋詰め作業に取り組んでいた。精神障害者が通う福光町荒木の「なんと共同作業所」。「みんなと一緒に作業し、冗談を言い合うのは楽しい」。以前は自宅で安静にしていたという福野町の男性(42)が、仕事の手を休めて笑みをこぼす。清水外茂雄所長(65)は女性指導員と顔を見合わせ、うれしそうにうなずいた。

 病院を退院した精神障害者が地域社会で暮らしていくうえで、ぶつかる壁は多い。日常生活のリズムを取り戻せなかったり、隣近所や職場での人間関係がうまくいかなかったり…。

 共同作業所は、そんな障害者の社会復帰施設の1つだ。内職などの軽作業を通して社会生活に慣れるとともに、孤立しがちな障害者同士が交流を深める。昭和50年代から全国的に設置の動きが広がり、62年に国や都道府県の運営助成制度ができた。県内では、障害者を持つ家族でつくる病院家族会や地域家族会が中心になって設立し、現在、15カ所に約250人が通っている。

地域の中で目配りを
共同作業所身近な場所に
 なんと共同作業所が開設されたのは昨年4月だった。南砺地方に精神障害者の社会復帰施設がなかったため、地域家族会の「なんと家族会」が福光町に働き掛け、地元住民の理解を得てオープンにこぎ着けた。家族の1人は「心の病を抱えながらも、作業やレクリエーションに喜々としている。それがうれしくてね」と笑顔を見せる。

 だが悩みも尽きない。県や町の補助金約560万円だけでは、運営費が不十分。平屋建て約80平方メートルの作業所も手狭で、清水所長は「通所希望者は多いんですが、これ以上は受け入れられない」と打ち明ける。通所者は地元だけでなく、福野や城端町、砺波市からも足を運んでいるが、工賃は1日数百円。遠方に住む通所者は通えば通うほど持ち出しが増える。「せめて、1町村に1つぐらい作業所があればねえ」。障害者と暮らす家族に共通する思いだ。

§   §   §
 福光町など砺波地域8町村は昨年末、県内初の任意協議会を設立した。県から合併重点支援地域の指定を受け、合併への動きを加速させている。合併が実現すれば、文字通り「1つの自治体に1つの作業所」が存在することになる。国と地方の財政悪化で、効率化や組織の統合再編が叫ばれる中、通所者の家族は「これで作業所は十分とされてしまうのでないか」と懸念する。

 市町村の境界が消えても、障害者の通所に伴う苦労が解消されるわけではない。早くから社会復帰支援に取り組んできた日本精神保健福祉士協会県支部の門田晋顧問(56)=谷野呉山病院事務長=は「社会復帰を願うのなら、最低でも中学校区に1つの作業所が必要。福祉は自治体と住民の距離が近いほどいい。行財政効率だけを優先させてはならない」と指摘する。

 8町村による任意協議会は、各自治体の条例や住民サービスの内容などをすり合わせるため、4,000に上るともいわれる調査項目のリストアップを始める。少子高齢化が進み、ますますニーズの高まる福祉。自治体の規模を拡大しても、きめ細かい目配りができるかどうか。効率化とのせめぎ合いの中、住民に答えを示さなければならない。

なんと共同作業所で、袋詰め作業に取り組む通所者たち
なんと共同作業所で、袋詰め作業に取り組む通所者たち=福光町荒木

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