富山県内の市町村合併 ホーム > 市町村合併 > 正念場の地方自治
正念場の地方自治 No.11 連載目次 前へ 次へ

第1部 暮らしと境界 小さな村の決断(下) 2003.01.13
 オープンから4年連続で、舟橋村立図書館は驚くほどの数字をたたき出した。住民1人当たりの貸し出し数で全国1位。13年度の貸し出しは14万9千冊、住民1人当たり62冊に上る。

 村民はこの「全国一」が、数字のマジックから生まれたものだと知っている。データは、貸し出した本の冊数を住民の数で割ったものだ。村民の利用が多いだけでなく、村外から訪れる人が7千人余りもいることが、数字を押し上げている。

 囲碁の本などを目当てに、上市町松和町から訪れた酒井肇さん(57)は「いつも、買い物で富山市に行く途中に寄るんですよ」と言う。図書館に併設された富山地鉄越中舟橋駅を利用する通勤客のほかにも、近隣の富山市や立山、上市町などから大勢の人がマイカーで足を運び、「交流人口」が全国一を支えてきた。

自主独立、明確な裏付け
懸念は町村の“切り捨て論”
 舟橋村は面積では3.47平方キロと県内で最も小さい自治体だが、県都富山市に接し、立地条件に恵まれている。保育料など他の自治体より安い住民サービスを「売り物」にし、交流人口だけでなく、定着人口を呼び込むのも難しくはない。

 「どうも誤解されがちだ」。金森勝雄助役は苦り切った表情で、「合併しない」と表明した松田秀雄村長の真意を代弁する。「舟橋という名の故郷を無くしたくないという愛村の情は確かに大きいが、合併しないと決めたのは、情緒的な問題だけではないんです」

 民間の宅地開発が進み、平成22年には1千人増の3500人まで人口が伸びると踏んでいる。広い山間部を抱える町村に比べ、小学校区並みのエリアは財政負担が小さく、大規模災害もない。上下水道や道路といったインフラは整備され、ごみ処理や介護保険なども広域圏でまかなっている。当面の課題は小学校の建設や中学校の増改築ぐらいだ。

 「国も財政難だ。地方交付税が何割か減額されるのは覚悟している。だが無駄な投資をせず、必要な事業から優先順位を決めて実施すればいい。収支バランスをとれば、やっていけるんですよ」と金森助役。大きな自治体とは違い、地区ごとの陳情や議員の圧力がなく、効率的に予算を組めるのも村の強みだ。「家庭的なぬくもりのある行政を捨ててまで、合併しようとは思わない。うちも勝ち残りをかけていますから」と強調する。

§   §   §

 「合併しない」と明確に表明している舟橋村が懸念するのは、小さな町村を人口規模の物差しだけで、切り捨てようとしている国の動きだ。人口1万人で線が引かれれば、舟橋村がやがて「自治体ではない」とされてしまう可能性がある。

 地形や面積、歴史など、各自治体の抱える事情はそれぞれ異なる。小規模町村を「行財政の効率が悪い」という理由で、一くくりにするわけにはいかないはずだ。

 自治庁(現総務省)の担当課長として「昭和の大合併」を進めた宮沢弘元法相は「自主独立を貫く気概のある小規模町村に、国は自治権を保証すべきだ」と指摘。「合併のうずに巻き込まれている当の市町村も『泣く子と地頭(国と県)には勝てぬ』とばかりに、損得論だけで論議を進めてはならない」と訴える。

 住民の暮らしに最適な境界を探り当てるには、市町村が自らの役割や機能、歴史風土を問い直す作業が欠かせない。

立地条件が良く、駅舎に併設された舟橋村立図書館
立地条件が良く、駅舎に併設された舟橋村立図書館には、近隣市町からも大勢訪れる=同村竹内
 第1部終わり。第2部「巨大化の未来は」は今月下旬から掲載します。

(C) 北日本新聞社 記事・写真の転載を禁じます
The Kitanippon Press, All Rights Reserved