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正念場の地方自治 No.17 連載目次 前へ 次へ

第2部 巨大化の未来は 生活の足 2003.02.05

 乗用車がすれ違うのもままならない、細く急な坂道を“恐竜”が上がってきた。大山町中心部の上滝地区から約10キロ離れた中地山地区。ボディーに「アンキロサウルス」を描いたバスが、公民館前の停留所に到着した。待合室はなく、寒さをこらえていた中島京子さん(67)の顔がほころんだ。

 独り暮らしの中島さんは、運転免許を持っていない。近くにスーパーもなく、月に2、3回の通院や買い物には、もっぱらバスを利用している。しかも運賃は無料。児童・生徒用のスクールバスに、一般住民も乗車できるからだ。事実上の路線バスで、町内6路線で運行されている。「タクシーだと片道3,000円かかる。年金生活の身には、バスだけが頼りですちゃ」。中島さんは急ぎ足で昇降口に進んだ。

町村で異なる運行方式
格差調整で維持可能?
 大山町は、県内の市町村で最も面積が大きい。約572平方キロで、県土の約7分の1を占める。昭和30年に上滝町と、周辺3村が合併して誕生した。当時は、旧村部と中心部の上滝地区を結ぶ民間のバス路線が放射状に伸びていた。だが、40年代に小中学校が次々に統合されると、平野部に移る住民が続出。民間のバス会社は47年、不採算を理由に撤退し、町が各路線を引き継いだ。

 過疎化とモータリゼーションの勢いはその後も止まらず、乗客は減る一方だった。国や県の補助を受けても、町の負担は毎年4千万円前後となり、7年には1台当たりの乗車密度5人以上という補助基準も下回った。運行の継続は困難となり、中島さんらの「生活の足」は危機に直面した。

 町は、各路線をスクールバスに切り替えることにした。遠距離通学する児童・生徒の送迎用スクールバスを運行する場合、地方交付税が受けられる。住民の利用も可能ならば、実質的に町営バスの運行継続となる。「国は一般住民の利用に難色を示したが、窮状を強く訴えた」と山元重男総務課長(50)。交付税はスクールバス4台で年間2,300万円となり、町の持ち出しは年間約3千万円に軽減、窮余の策で危機を脱した。

§   §   §

 山間部の集落と、自治体の中心部を結ぶバスを運行しているのは大山町だけではない。1月に富山市との合併協議に参加した上新川、婦負両郡6町村のうち、広大な中山間地を抱える八尾町と山田村も、コミュニティーバスを走らせている。

 八尾は13路線で、料金は高校生以上100円。3路線の山田は大人200円に料金設定しており、運行形態、料金とも大山町と隔たりがある。

 山元課長は「7市町村が合併すると、県土の3割の面積を占める自治体になる。大山のような特異な運行方式を、将来にわたって続けられる保証はない」と懸念する。

 「サービスは高い方へ、負担は低い方へ」−。市町村合併の際、自治体間の格差を調整する原則として語られる言葉だが、その難しさを予感しているからだ。今の運行形態を維持できなければ、合併への理解は得られにくい。その半面、サービスの平準化や効率化を図らなければ、自治体の規模を拡大する意義は薄れる。「住民にどんな答えを示せるだろうか」

 7市町村は来年度早々、条例や行政サービスなどをすり合わせる法定協議会を発足させる。

大山町が運行するスクールバス
大山町が運行するスクールバス。児童・生徒だけでなく、大人も無料で乗車できる=同町上滝

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