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正念場の地方自治 No.18 連載目次 前へ 次へ

第2部 巨大化の未来は 介護保険 2003.02.06

 雪がやんだ1月末、魚津市大光寺の特養ホーム・新川ヴィーラで松本照子さん(73)が、窓辺に置いたスイセンの鉢を見ながら笑みをこぼした。「花を育て、書に親しむのが趣味なんです」。脳梗塞で倒れてから手足が不自由になり、主に車いすで移動している。月に一度の定期検診で、福祉タクシーに乗って外出するのが楽しみだ。施設での暮らしは8年になる。

 生活保護を受けている松本さんが、そっと差し出したファイルには、預金の出し入れを記した用紙がとじられていた。毎月出金される2,900円が、現在支払っている介護保険料だ。「魚津市はどこと合併するんでしょうね。負担があまり増えず、サービスもよくなればいいんですが。そんなこと可能かしら」

負担 必ずしも減らず
合併枠組みで変わる水準
 若いころに県外に出た松本さんは、離婚した前夫が脳梗塞で倒れたため、介護を引き受けた。「無理をしたのか、同じ病気で倒れてしまってね」。身寄りがなく、弟がいる故郷の魚津市に戻ったのだという。

 高齢化社会を迎え、介護をする家族の負担は増える一方だ。介護保険は40歳以上のすべての人が保険料を納め、介護が必要になったときにサービスを受ける仕組み。魚津や滑川市のように単独で運営する自治体もあれば、黒部など1市3町のように一部事務組合をつくり、広域圏で仕事をしているケースもある。

 65歳以上の介護保険料は地域で異なる。魚津市で暮らす松本さんは月2,900円余りだが、黒部など1市3町に比べ100円ほど高い。「一般にサービス水準の高い市町村は、費用もかかる。だから保険料も高くなるんです」と県の担当者は説明する。

 介護保険は「地方分権の試金石」と呼ばれ、市町村や住民の判断で地域に根ざした事業を行い、サービス水準や負担を決めるのが建前だ。魚津市は訪問看護やデイケアなどサービスを充実させ、その分、保険料も割高になっている。在宅サービスがよく利用されている一方、費用のかかる療養病床など、施設のベッド数の多さが保険料にはね返っている。

§   §   §

 65歳以上の保険料は新年度の改定で軒並みアップする。介護の必要な高齢者が増え、利用が大きく膨らんだからだ。魚津市などは4千円を超える見通しで、黒部市などとの差は広がる。「魚津と滑川が合併すれば、施設面では似ているから今と同じようなサービス水準になるでしょう」と新川ヴィーラを運営する新川老人福祉会の林照夫理事長代理。「だが、保険料を軽減するのは難しくなる。黒部などと合併すれば、サービス内容は平均化されて負担も軽くしやすいはずです」。在宅ケアを充実させ、予防に重点を置いたサービスをいかに提供していくかという課題に加え、「合併の枠組み」も、介護行政の将来像をどう描くかにつながっている。

 「サービスの比較は、これまでタブーに近かった。合併を研究し始めて良かったのは、市町村が客観的に、行政内容を見つめるようになったことだ」と県東部のある首長は語る。水道料や保育料なども市町村で大きく異なり、「サービスは高く、負担は低く」とばかりに、単純には、すり合わせられない課題が多い。「負担を減らせば、それだけ多くの財源が必要だ。規模の拡大と効率化で、穴埋めできるのか」と疑問視する合併担当職員は少なくない。

施設で過ごす松本さん
花の栽培を趣味に、施設で過ごす松本さん=魚津市大光寺

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