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正念場の地方自治 No.22 連載目次 前へ 次へ

第2部 巨大化の未来は 庁舎を分ける(上) 2003.02.11

 「クラスターちゃ、よう分からん。分庁舎と言われても、どんな中身なのか」。2月6日、井波町本町の70代男性は首をかしげた。井波など砺波地域8町村の合併任意協議会が5日に開かれ、「平成16年11月1日」をめどに新市を発足させることをニュースで知ったが、まだピンとこない様子だ。

 井波と城端、福野、福光、井口、平、上平、利賀。この8つの町村は人口6万人、面積約670平方キロの「新市」を目指している。新しい庁舎をつくらず、今ある町役場を「分庁舎」として活用。企画総務、民生、産業経済、建設といった行政の各部門をそれぞれの庁舎に分けて置く。

 綿貫民輔衆院議長が昨秋、砺波市で行った講演で、京都と大阪、奈良の3府県をまたぐ関西文化学術研究都市「けいはんな(京阪奈)都市」が、機能を分散させるクラスター方式を取り入れていることを引き合いに出し「砺波地方の合併も、この方式がいい」と語ったのがヒントになった。

煩雑になる行き来
意思疎通に大きな課題
 「クラスターという英語は『ブドウの房』などを意味する。一つひとつの粒が、輝くような市にしたい」。首長の言葉はバラ色だ。まだ具体的な構想は見えず、先行きを危ぶむ住民も多い。任意協議会の事務局は「単なる分庁舎ではなく発展させたものにする。視察と研究を重ね、構想を描きたい」という。

 全国の合併市で、この方式に近いのは西東京市や岩手県北上市など。

 平成13年に旧田無市と保谷市が合併した西東京市は、2つの市役所をそのまま利用した。「合併協議では、庁舎をどこに置くかで必ずもめる。そんな問題は起きようがなかった」と総務部の大村美一副参与は話す。

 企画部門や議会などは市長がいる「田無庁舎」に一本化。「保谷庁舎」には都市計画や教育部門などを置いた。住民窓口は両庁舎に設け、市民が遠くまで出掛けずにすむようにしている。

 職員数が合併後1年で20人ほど減ったことなどから人件費は約4億4,600万円削減され、合併特例債の活用もあって財政力は強化された。学区見直しなどメリットは大きい。「ただ、住民からの苦情はあまりありませんが、庁舎は多少不便になりました。職員はもう慣れましたが…」

§   §   §

 2つの庁舎の間は車で約15分。1時間に1本ずつ無料のマイクロバスなどが往復する。会議に出る職員や、文書の“宅配便”などに使っているほか、ごくまれに担当課を間違えて訪れる市民の移動手段にもなる。

 議会が始まると、保谷庁舎の管理職は、田無庁舎に向かう。残された職員は、パソコンの画面に映された議場の様子を見守ることになる。「議場の上司が、質問に答える資料を持たないケースがある。すると控え室に詰めた職員が、保谷庁舎にいる職員と電話やファクスでやり取りするわけです」。こうしたわずらわしさだけでなく、住民窓口がいくつかの庁舎に重複すればするほど、人件費を抑えにくくなるデメリットもあるという。

 「8つの町村で合併する場合ですか? 部局の配置や人の移動、どうやって意思疎通を図るかに知恵を絞る必要がありますね」と、大村副参与の言葉には実感がこもっていた。

 砺波地域の8町村は、財政規模の大きい砺波市や庄川町とたもとを分かち、クラスター方式に生き残りをかけている。役所を分散させると効率は悪くなるが、合併を前提にして8町村が将来像を描くとき、なくてはならない方法でもあった。

西東京市の田無庁舎(上)と保谷庁舎
西東京市の田無庁舎(上)と保谷庁舎。新庁舎をつくらず、2つの旧市庁舎を利用した

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