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正念場の地方自治 No.23 連載目次 前へ 次へ

第2部 巨大化の未来は 庁舎を分ける(下) 2003.02.12
 「旧役場を、合併後に分庁舎にした自治体は珍しくないが、私の提案は発想が違うんですよ」。富山市丸の内の北陸経済研究所で、向井文雄情報開発部長は自信をのぞかせた。最近になって、砺波地域8町村の合併任意協議会事務局にもアドバイスしたという研究成果は名付けて「分都方式」。

 市町村合併のメリットの一つは、人件費の削減とされる。保健師など現場の職員はなかなか減らせなくても、企画や総務部門は一本化することで職員を整理できる。西東京市なども合併後に企画部門を一つにした。「私はむしろ、旧町村にこそ企画機能を残すべきだと考えているんです。合併を成功させるためにも、よく考えてほしい」

旧町村に必要な企画機能
周辺の衰退防止に効果
 もともとは県の職員。計画課などを経て、平成11年に今の職場に派遣された。将来を見越し、都道府県の枠組みや役割を再編する「道州制」を考えているうち、市町村合併も研究し始めた。

 道路を1本つくるだけでも、道沿いの地価は上がる。住む場所によって住民が受ける恩恵はずいぶん違う。東京都が、政府機関の立地で巨大な利益を受けているのも同じ理屈だ。「行政マンは常に、こうした『事実上の利益』が存在しないかのように、事務を行っている。考え始めたら仕事になりませんからね。でも合併論議は、この当たり前の事実からスタートする必要があるんです」

 「平成の大合併」には特徴がある。砺波地域のように、昭和の合併である程度まとまった町などが、さらに広い地域で合併すると、複数の中心地を持つ構造になる。「周辺地」になる住民が不安を抱くのは当然だ。法定協議会をつくりながら決裂した全国のケースは、多くがこの問題を背景に抱えていた。

 過去の合併も同じだ。「周辺」を納得させるため、やむを得ず選択されてきた支所方式。こうした支所機能は、高岡市の例のように、歳月とともに縮小されるケースが目立つ。合併直前までは、周辺の旧市町村にも「合併しない」という選択があり、交渉力を発揮して権限の大きい支所の設置などを実現させるが「力関係だけで合意すると、やがて事務を効率化するという理屈に対して説得力を失う。職員が替われば、縮小されゆく運命にあります」。周辺にハコモノをつくるのも、その場しのぎにすぎない。

§   §   §

 砺波平野に分散する各町村には、民謡や木彫刻といった伝統が息づき、個性豊かな町づくりを進めてきた。2月7日から3日間開かれた「利賀そば祭り」では、利賀村の職員が、企画から駐車場整理までフルに動き回った。米沢博孝村長は「イベントなどは総出で取り組んでいる。合併で職員数を何割ぐらい減らすのか、どう地域おこしするかが課題だ」と言う。

 向井部長の分都方式が「企画機能」を重視するのには理由がある。「個性や文化を守るには、住民と顔をつき合わせ、地域の事情をよく知っている職員が企画に携わるべきなんです。集合化されたオフィスの中で、中心部の将来を考えながら、周辺地の振興策まで考えるのは難しい」

 地域に役立つ情報は、そこに役所があるから集まってくる。旧村にも、単なる窓口サービスだけでなく、企画機能を残して地域振興を進める仕組みをつくるべきではないか。向井部長はそう提案し「テレビ会議システムを導入して情報化を進めるなど、優先すべき課題は多い。過度なハコモノづくりは禁物です」と、くぎを刺す。

大勢の人でにぎわうそば祭り会場
大勢の人でにぎわうそば祭り会場。村職員総出で盛り上げた=利賀村の利賀国際キャンプ場

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