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正念場の地方自治 No.25 連載目次 前へ 次へ

第2部 巨大化の未来は 浮上した「区」制 2003.02.14
 「自立した『区』の集合体による、新しい都市像をつくり上げたい」。森雅志富山市長は力をこめた。4日、市町村合併特別番組の収録が行われたケーブルテレビ富山のスタジオ。上新川、婦負両郡の6町村で合併を目指すことになった経過を踏まえ、新市への導入を提案している「区」制について語り始めた。

 地方制度調査会が検討している内部団体方式に先行するかたちで「区」制を提案した理由に、まず面積の大きさを挙げた。7市町村が1つになれば、総面積は1,240平方キロになる。県土の3割を占める「巨大な県都」には純農村や中山間地など、成り立ちや文化風土の異なる地域が混在する。

 「一律の施策では限界がある。旧市町村単位ごとに一定の予算と権限をゆだね、市の中に自治組織をつくりたい。住民との距離が広がりすぎないようにしたい」と強調した。

旧市町村に予算と権限
内なる分権と自治の手段に
 提案は年明け早々にされ、絶妙のタイミングだった。合併協議に応じた周辺6町村のうち、まだ八尾町が合併協議会設立準備会に「とりあえず参加」という立場で、「行政の中心が富山市に移れば、周辺は切り捨てられる」という危機感を持っていた。自治権を残す配慮が示されたことで、反対派町議の態度が軟化した。

 しかし、その全容が固まっているわけではない。森市長は「どれほどの財源や権限を移譲するか。全国にも例がなく、大変難しい問題だ」と繰り返した。

 「区」制度は現在、東京都と、人口50万人以上の政令指定都市が取り入れている。東京23区は公選の区長や議会を置く「特別区」で、市に匹敵する権限を持つ。一方、政令指定都市の「区」は、市職員が区長に就き、区議会も存在しない。徴税権や条例制定権もないが、住民生活に身近な事務や予算執行の一部を担っている。

 人口350万人の横浜市は平成6年度から、市内の18区に「個性ある区づくり推進費」として、年間1億円ずつ予算を配分。使途は各区にゆだねている。同市は「区が住民ニーズに柔軟かつ迅速に対応するには、ある程度の額が必要。『内なる分権』に向けた取り組みで、来年度は企画内容に応じ、配分額に差をつけたい」と説明する。

§   §   §

 森富山市長の唱えた「区」制は、政令指定都市の制度を発展させたものになる可能性がある。1月15日の市議会合併対策特別委員会で、市側は旧市町村ごとに「地区総合行政センター」を設置し、住民票発行などの窓口業務だけでなく、道路整備や農業振興といった分野で予算執行権を与えるとした。


 政令指定都市の「区」以上の予算と権限の委譲が見込まれ、上婦負6町村でも評価する声は多い。だが、婦負郡のある町議は「逆に大きな矛盾を抱えたのでないか」と疑問を投げ掛ける。

 権限を持ち、大きな額の予算を執行するには、相応の職員が必要だ。合併の狙いの一つである人員削減は進まず、議会のような監視機能の整備にも迫られる。「結局、富山市が旧町村の予算を削っただけという不満が噴出しかねない」と心配する。

 収録のあった4日、富山市議会議長らが合併を拒む中新川郡の舟橋村や上市町などを訪れた。あらためて合併を要請し、「合併後の区には、全体予算の7割を保証する」と持ち掛けた。郡内の議会関係者は「本当に可能なのか。合併の取引材料に終わらなければいいが…」とつぶやく。

 「区」制は、自治の芽を膨らませる手段にしなければならない。

「区」制導入への考えを語る森富山市長
ケーブルテレビ富山の特別番組で、「区」制導入への考えを語る森富山市長

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