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正念場の地方自治 No.26 連載目次 前へ 次へ

第2部 巨大化の未来は 都市間競争 2003.02.16
 「そんな…」。富山八尾中核工業団地にある高松メッキの毛利敏取締役製造部長(45)は、声を上げそうになった。昨年秋、地元の八尾町議から「富山市との合併が実現すれば、お宅も大変になるね」と聞かされた。

 人口30万人以上の都市が、事業所に課す「事業所税」のことだった。都市環境の整備に充てる目的税で、県内では富山市だけが、各事業者から床面積1平方メートルにつき年額600円の資産割と、従業員給与総額の0.25パーセントなどを徴収している。

 毛利部長は、団地への進出企業26社でつくる企業協議会の会長も務めており、団地全体の納税額を試算した。自社分だけで年300万円、26社の総額は1億1,000万円となった。富山市は合併後5年間、旧町村の事業所から徴収しない考えを示唆しているとはいえ、コストダウンに迫られることは間違いない。「簡単には割り切れない。富山市が、しゃにむに巨大化を図る狙いはどこにあるんですかねえ」

市域拡大で負担増
自律できる仕組みを
 富山市は昨年夏に「大同団結」を唱え、広域圏11市町村による合併実現に向けて動き始めた。人口32万人、本年度予算の一般会計約1,100億円。県内一の行財政規模を誇る自治体が、合併を積極的に進める理由は市民には分かりづらい。

 確かに、合併を呼び掛けた各自治体とは、ごみやし尿処理など広域圏行政の実績があり、生活圏の一体化が進んでいる。国は「アメ」と「ムチ」で合併を迫っており「広域圏のリーダーとして相手を選別できる立場ではない」(市幹部)という言葉にもうなずける。

 だが、合併特例法による優遇措置があるとはいえ、財政力が弱く、広大な中山間地を抱える町村を市域に加えれば、否応なく市民の負担は増す。それにもかかわらず、「対等合併」や「区」制導入を提案するなど、周辺町村に“譲歩”を重ね、巨大化を急いだ。

 「手をこまねいていては都市間競争に敗れる。求心力ある拠点都市を実現したいのですよ」と、石田淳助役は説明する。

 隣県を見渡せば、新潟市約53万人、金沢市約46万人で、富山市を上回る。両市とも周辺町村と合併協議を進め、政令指定都市実現を狙う。さらに約10年後には北陸新幹線が開業。人口が一気に流出する「ストロー現象」も懸念され、両市の間に埋没しかねない。「都道府県を再編する道州制を視野に、さらに巨大化を進める必要がある」と力を込める。将来の財政不安から合併に踏み出した周辺町村とは、動機は異なっていた。

§   §   §

 しかし、巨大化には犠牲と痛みが伴う。

 「昭和の大合併」を検証すれば、旧町村の役場は支所に格下げされ、その機能は縮小の一途をたどった。議員数削減で周辺部の声は行政に反映されにくくなり、投資はおのずと中心部に集中。山間部の過疎を加速させ、各種選挙で低投票率を招くなど、自治を阻害する要因となっていた。

 新たに浮上した事業所税もそう。企業には想定外の負担となり、毛利部長は「企業進出にブレーキをかけ、雇用の悪化にもつながりかねない」と懸念する。

 地方自治が機能するには、住民が参加し、対話し、自律できるにふさわしい広さと人口規模を保障しなければならない。合併による巨大化は「集権と分権のもろ刃の剣」だ。しっかりとした狭域での自治の仕組みを構築せず、効率や都市間競争だけに目を奪われていては、「水膨れ合併」に終わってしまう。歴史を繰り返してはならない。

富山八尾中核工業団地
富山八尾中核工業団地。富山市との合併が実現すれば、各社には事業所税が課せられる=八尾町保内
 第2部終わり。1、2部で指摘した課題などについて識者に聞く「インタビュー編」を引き続き掲載しまず。

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