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正念場の地方自治 No.34 連載目次 前へ 次へ

第3部 ルポ・列島 再編の現場 香川県さぬき市 2003.03.15
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 「よくぞ空中分解しなかったものだと思う。利害関係を調整するのは本当に難しいもんですな」。胃の辺りをさすり、小西俊雄旧長尾町長(80)は香川県さぬき市誕生の経緯を切り出した。

 高松市からJR高徳線で20分。瀬戸内海を臨むさぬき市は昨年4月、大川、寒川、志度、津田、長尾の大川郡西部5町が合併して誕生した。人口約5万7,000人。坂出に次ぐ県内4番目の規模で、名物のうどんとともに、「平成の大合併」の先陣を切ったことで知られる。小西氏は合併協議会長のほか、新市長が決まるまで市長職務執行者も務め、名実ともに合併のかじ取り役を担った。

反発覚悟で平均値選択
「負担低く」は困難

 5町の合併は、住民発議でスタートした。10年に青年会議所などが署名運動を展開し、郡内8町の議会に合併協議会の設置を求めた。「町より市の方がイメージがいい」という発想からだった。

 発議は、地形上の中心地になれないことを嫌う志度、長尾両町議会に否決されたものの、その後両町議会はあらためて合併推進を決議。12年春、高松市寄りの5町で合併協議会を立ち上げた。「景気低迷や少子高齢化から、財政基盤の強化が必要との共通認識があった」と小西氏は振り返る。

 7年に誕生した東京都あきる野市などを参考に、合併協議はスムーズに進んだ。最難関の市役所の位置は、5町の役場で最も新しく、規模も大きい志度町庁舎を「当面の仮庁舎」とし、正式決定は将来にゆだねるという「玉虫色」の結論に軟着陸させた。新市の名称は、どの町名も使わず、香川の旧国名にちなむ「さぬき市」で一致した。

 庁舎位置に関しては「難題を先送りした」との批判もあったが、市合併プロジェクト室の十河信二課長補佐(47)は「住民感情を考えれば、新庁舎建設など許されるはずがない。そんな事情も奏功した」と分析する。

 ところが、大詰めで急ブレーキがかかった。「大した問題でない」(小西氏)と踏んでいた水道料の設定や財産の扱いをめぐり、合併が危ぶまれる局面が続いた。

 水道料は、各町の水源が異なるため、一般家庭用20立方メートル当たりの1カ月の料金は一番安い津田町が2,290円、最も高い大川町は3,460円で、およそ1.5倍の開きがあった。

 合併の金科玉条とされる「サービスは高く、負担は低い方へ」の標語に従えば、合併に伴う特別交付税が配分されても、すぐに財政悪化を招いてしまうと判断。負担増となる津田町民の反発を覚悟で、ほぼ平均となる2,670円とした。

 各町の貯金にあたる「財政調整基金」の扱いも難航した。最も多い志度の約7億6,000万円に対し、大川は約8,000万円。旧志度町議会は「体力差」への警戒心から、各町長に合併協定書とは別の「第二協定書」を締結するよう迫った。合併後10年間、旧町の持ち込み財源はそれぞれの町の事業に充てる|との内容だった。「地域エゴの最たるもの」と知りながら、妥協するしかなかった。

香川県さぬき市の庁舎
5町が合併し、14年4月に誕生した香川県さぬき市の庁舎。旧志度町役場を「当面の仮庁舎」とした
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 新市誕生から間もなく1年。目に見える合併効果は表れず、旧町意識が解消されたわけでもない。「水道料が上がっただけ」との声も聞こえる。だが、小西氏は繰り返す。

 「ご破算になるのを避けるため失敗もあった。ただ、住民に約束できること、できんことは区別した。バラ色の未来ばかり語って、合併に突き進んではならんと思った」

 合併の手本としたあきる野市は、新市移行の1年半後から国民健康保険税など引き上げ始めている。「財政状況の変化」(同市)が理由だった。将来を真剣に考えればこそ、標語の実行は難しい−。生みの苦しみを味わった小西氏の実感だ。


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