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正念場の地方自治 No.39 連載目次 前へ 次へ

第3部 ルポ・列島 再編の現場 三重県伊賀地方 2003.03.23
行政の仕掛け
 「忍者の里」として知られる三重県の伊賀地方で、住民たちが、合併後の「新市将来構想」づくりに取り組んだ。上野市など6つの市町村が、任意の合併協議会の中につくった委員会だ。委員は大学教授のほか、公募で選ばれた会社員や主婦、学生ら住民44人。役場の職員や議員は、1人も入っていない。

 「住民自治協議会って何をする組織?」「地域づくりに向けて企画立案し、話し合う場だ」「単なる陳情の窓口になっては駄目だね」。昨年7月から2カ月間、委員は、住民自治の新たなシステムづくりに没頭した。

住民の手で将来構想
地域を支える主役に

 伊賀盆地には、上野市や伊賀町など7つの市町村があり、名張市を除く6市町村で合併協議を進める。大阪、名古屋の2大都市とは山で隔てられているが、車で1時間の距離。首都機能移転の候補地にも挙がっている。

 上野市など伊賀地方の任意協議会が、ほかの協議会と大きく異なるのは、新市の理念や基本方針をまとめる「新市将来構想策定委員会」を民間人に限ったことだ。44人の公募枠に83人が名乗りを上げ、論文選考でメンバーを決めた。民間人だけを委員にしたのには理由がある。

 任意協議会事務局の計画グループリーダー、前川浩也さんは「伊賀は、民間団体の活動がものすごく活発なんですよ」と切り出した。低い山に囲まれた盆地で暮らす伊賀の住民たちには独立独歩の気風が育ち、自ら「伊賀びと」と呼ぶ。「地域のことは地域で」という意識が強く、福祉など公共的な活動をするNPO(民間非営利団体)は、法人格のない団体を含め400近くもある。NPOの事務局を請け負う全国初の「NPOのためのNPO」があるほどだ。

 住民たちでつくる委員会が、力を入れた構想の1つに、新市をいくつかの地域に分けて自治活動を行う「住民自治協議会」がある。政府の地方制度調査会が検討している「地域内分権」を先取りした動きといえる。


 介護保険やごみ処理など広域的な行政サービスは役場などに任せるが、在宅介護や環境美化、地区イベントといった住民に身近なサービスは「住民の手」で担っていこうという考え方だ。

 「住民自治協議会」は小学校区単位を基本に設置することができ、自治会やPTA、NPOなどで運営委員会をつくる。「行政と同じように地域もまた、自治会やPTAなど縦割りになっている」(前川さん)ため、地元の組織すべてをまとめる役割を果たす。公園管理などを請け負うほか、地域の課題解決を図る「まちづくり計画」を策定し、住民の意見を行政に反映させるという。

 強制的に設置するものではなく、あくまでも住民による自発的な組織化を目指す。行政は、そのきっかけをつくろうとしている。

新市の将来構想を策定した地域住民の委員会
新市の将来構想を策定した地域住民の委員会=三重県上野市
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 将来構想の策定には、委員のほかにも多くの住民がかかわった。委員会は、一般の人に見学を呼び掛け、意見用紙を配った。タウンミーティングも2度開き、幅広く声を吸い上げた。「住民がつくったものを行政は覆せません。『主役は住民』が基本です」と、前川さんは強調する。

 将来構想は今年1月にまとまった。構想の文言で、住民を示す「市民」にはすべてカギかっこを付けている。「市民」は単なる生活者ではない。地域を支え、自治の主役になろうとする個人や団体を意味する。

 最終報告の冊子を手に前川さんは言う。「協議会を設置しなくても、共通の行政サービスは受けられます。だが、設置すれば住民の手で新たなサービスを生み出せるんです。地域を良くしたいと考える市民は、積極的に支援したい。自治も競争の時代なんですよ」


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