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正念場の地方自治 No.41 連載目次 前へ 次へ

第3部 ルポ・列島 再編の現場 栄村フォーラムと決起大会 2003.03.25
小さくても輝く
 「自治体のあり方は、市町村と、そこで暮らす住民が決めるものだ」。合併反対を唱える群馬県上野村の黒沢丈夫村長が発言を終えると、静かだった会場が割れるような拍手に包まれた。

 2月下旬、雪景色が広がる長野県栄村で開かれた「小さくても輝く自治体フォーラム」。合併に頼らないまちづくりを考えようと、北海道から鹿児島県まで47の町村長ら500人が集まった。?町の憲法?に当たる「まちづくり条例」を全国に先駆けて制定した北海道ニセコ町の逢坂誠二町長や、「合併しない宣言」第1号となった福島県矢祭町の根本良一町長らが呼び掛けて開いた。

 「自治は本来、住民が行政に参加する理念のはず」「顔の見える範囲が理想だ」。財政優遇策や地方交付税の削減など「アメとムチ」をちらつかせ、自治体再編を進めている国に対し、小さな町村が声を上げた。

町村解体せず存続を
独自の再編案示す

 議論は「自治体のあり方」が柱になった。

 「大きくなったからといって、すべて解決できるわけではない」。福岡県大木町の石川隆文前町長は疑問を投じた。1万4千人の大木町は約1,100ヘクタールの耕地面積のうち、土を掘って水を流す「堀割」が16パーセントも残され、昔ながらの田園風景が広がる。自然を守ろうと、生ごみをたい肥化し、農家が再利用する事業を手掛けている。「ごみをきめ細かく分別するには、住民の協力が欠かせない。小さな町だからこそできる」と力を込めた。


 会場となった長野県栄村は、国の補助金に頼らず水田や道路を整備しているほか、村独自の介護ヘルパーを集落ごとに認定している。下駄(げた)をはいてでも通える「下駄ばきヘルパー」事業だ。

 高橋彦芳村長は「自治は政策を自己決定し、創造する権利だ」と強調した。小規模町村では高度化する行政サービスを担えないという風潮に対し、2,600人の小さな村でも「自律ある自治」を実現してきたという思いがにじむ。フォーラム最終日に採択された「雪国からのアピール」は、小さな町村の自治をはぐくみ、ともに歩んでいくことを強く訴えかけた。

合併に頼らないまちづくりを考えたフォーラム
合併に頼らないまちづくりを考えたフォーラム。全国から47町村長らが集まった=長野県栄村
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 その2日後。日本武道館に全国約6千人の町村長、町村議会議長が集結した。全国町村会などが開いた総決起大会だ。それぞれ「町村自治確立」のスローガンの入った鉢巻きを締め、会場は熱気に満ちていた。

 開催には一つの狙いがあった。政府の「地方制度調査会」は今、合併しない小規模自治体の業務を窓口サービスなど一部に限るという西尾勝副会長(国際基督教大教授)の私案をたたき台に、論議を進めている。中間報告が出される前に、その流れを変えたかった。

 総決起大会では、国の政策を批判するだけでなく、広域行政を担う「市町村連合」を設ける独自の再編案を示した。

 西尾私案との大きな違いは、今ある市町村を基礎的自治体と位置づけた点にある。合併という手法をとらなくても市町村が強く手を結べば、行政能力を高めることができるという考え方だ。「今まで個性的な自治を築き上げてきた町村をわざわざ解体しなくても、合併と同様の効果を生む」(全国町村会)という。

 既存の広域連合では、責任の所在があいまいだと指摘する国に対し、直接選挙で連合の長を選ぶ提案をした。自治体内部に、地域単位の自治組織をつくることなども盛り込んでいる。全国町村会長の山本文男福岡県添田町長は2月末の地方制度調査会で、独自案の導入を迫った。「財政事情が厳しいからといって、小規模自治体にペナルティーを科しても解決にならない」。町村側は生き残りをかけて、反撃に転じようとしている。

 合併はあくまで手段の一つだ。新市の名称や条例、税金、各種サービスの調整など協議すべき内容は多いが、単なる「すり合わせ」に終わらせてはならない。地方分権と住民自治の力を強めるという本来の目的を忘れた「理念なき合併」は、愚策に等しい。町村側の提案は、そのことをあらためて問い直している。

 第3部終わり。第4部「合併と市町村議会」は4月中旬から掲載します。

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