堀議長は、合併の枠組みが固まった昨年12月上旬、米沢博孝村長から「村には、2人分が確保される」と聞かされていた。直後の住民懇談会でも、村長はそう説明してきた。「話が違うじゃないか」。村長に迫っても反応はなく、他の3つの村の出席者も口を閉じたままだった。場違いな発言をしているようで、思わず周囲を見渡した。
利賀村を代表する堀議長は、ほかの3村とは異なる事情を抱えて協議に臨んでいた。4つの村の人口は、いずれも1,000人前後。8人か10人の議員がいる。2回目の定数が減るのは同じだが、それぞれの村を取り巻く環境には大きな違いがあった。
東海北陸道が昨年、岐阜県白川村まで開通。平と上平村は山あいの小さな村だが、世界遺産の「合掌造り集落」を生かし、中京圏から人を呼び込むなど「観光」という産業基盤を築いた。井口村は新しい市のほぼ中央に位置し、「合併しても辺境になるという意識はない」(伊東浩村長)。
利賀村は世界演劇祭を開催し、「演劇の村」として全国に名をはせている。そば祭りなど集客力のあるイベントも多く、村を挙げて地域おこしに努めてきた。しかし、イベントだけでは村民の懐は潤わないと、堀議長は身に染みて感じている。
「山村の産業は限られているんです。利賀ではそれが何か。公共事業ですよ。村は陳情と公共事業で成り立っている」
村民の約3割が、建設業に就いているのが実態だ。国や県の事業を村が呼び込み、村民の要望を受けた議員が地盤の業者に仕事を引っ張る。トラブルがあれば、仲介役になるのは議員。行政、村民にとって欠かせない存在になっている。
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