富山県内の市町村合併 ホーム > 市町村合併 > 正念場の地方自治
正念場の地方自治 No.47 連載目次 前へ 次へ

第4部 合併と市町村議会 地域審議会 2003.04.22
 県境の利賀村は雪が舞っていた。3月11日、暖房で暖められた議場に村議らの熱のこもった声が響く。「新市の議会で議員はたった1人。それで何ができるのか。地域審議会は欠かせないし、権限も絶対に必要だ」。利賀村議会3月定例会。村議の1人が、合併後に「地域審議会」を設置することを強く訴えた。

 米沢博孝村長は「今回の合併の目玉だと思います。ある程度の権限と予算を与えなければならない。どんな組織にするのか協議会で話し合っていきたい」と答えた。

 定例会の10日前、利賀村など砺波地域8町村の任意協議会で、新市の議員定数案が了承された。中選挙区制を採用し、利賀のエリアから選出する議員は第2回選挙で1人になる。その後の選挙は未定。6万人の新市で、1,000人の利賀村から議員を出せる保証はどこにもない。その不安を解消するため浮上したのが、住民の声を行政に反映する地域審議会だった。

再編後のカギ握る存在
議会の代わり務まるか
 他の町村議会でも同じやり取りがあり、首長たちは「地域審議会に、ある程度の権限を持たせたい」と強調した。合併後の議員数は、8町村で現在活動する議員の3分の1にまで減る。何とか手を打たなければ、という思いは同じだった。

 「だが、よく分からないんですよ。中央の動きがね」。8町村のある首長はこぼす。

 合併特例法にある制度と、首長たちの発言には微妙な違いがある。「権限を与えることは法的にできず、あくまで意見を述べる機関」というのが総務省の説明だ。8町村は特例法が定める「地域審議会」よりも発展させた機関を考えている。

 だが地域審議会は、言葉だけが1人歩きしているような存在だ。設置したのは、まだ全国に5市町しかない。そのうち4市町は4月に合併し、動き出したばかり。「全国第1号」の岩手県大船渡市にしても、平成13年11月、今からわずか1年半前に地域審議会をスタートさせている。

 人口3万7千人の大船渡市が、8,500人の三陸町を編入合併した。地域審議会は旧三陸町に置き、委員は公募3人、自治体職員5人、学識経験者7人の計15人。設置は10年間に限り、合併前につくった新市建設計画などについて審議する。ところが、これまで話し合ったのは「基金」の使い方だけ。本来審議すべき建設計画について諮問はない。道路整備など計画に盛り込まれた事業の年次ごとの優先順位が決まっていないためだ。

 「初めは大きな権限を持つと思っていたが、ふたを開ければこのありさまだ。われわれの役目は何なのか」と、会長を務める綾里(りょうり)漁業協同組合長の佐々木昭夫さん(66)。「おまけに行政が優先順位を決めてしまえば、審議会の意味だってない。受け身の存在ですよ」

§   §   §

 8町村の首長がむしろ意識しているのは国が言う「地域自治組織」だ。小泉純一郎首相の諮問機関「地方制度調査会」が30日まとめる中間報告に盛り込まれる。

 この組織は旧市町村単位に置き、自治権を認める。議決機関を設け、一定の事務処理を行うことも検討している。全国の市町村が合併へと突き進む中、国はようやく「合併後」に手をつけ始めた。砺波地域8町村の合併まで1年半。ある首長は「地域審議会にしろ自治組織にしろ、地域のあり方を決める最も大事なポイントなのに、協議にも入れない」と打ち明ける。

 「本来なら、議員定数だけを抜き出して決めるのはおかしい。将来像をどう描くかが先だ」。利賀村の堀元繁議長は、疑問を投げ掛ける。村の議員はこれまで行政が立てた方針に沿って、村民の意見を調整する「まとめ役」だった。地区割りの議員のいらない地域の新しい将来像を描くには、旧町村の自治を担う機関なり組織が鍵を握っている。「それが明確なら、議員の存在に固執する必要もないんだが…。これからは、住民の声を吸い上げる『議員』として携わりたい」

 合併協議はまだ始まったばかりだ。議員が「声」を届けるのは今しかない。

利賀村議会3月定例会
地域審議会の設置を求める意見が相次いだ利賀村議会3月定例会=3月11日

(C) 北日本新聞社 記事・写真の転載を禁じます
The Kitanippon Press, All Rights Reserved