富山県内の市町村合併 ホーム > 市町村合併 > 正念場の地方自治
正念場の地方自治 No.49 連載目次 前へ 次へ

第4部 合併と市町村議会 中選挙区制(下) 2003.04.24
 非公式の会議が開かれていた。カーテンを閉め切った井波彫刻伝統産業会館の一室。話し合いのテーブルに着くのは井波と城端、福野、福光町の議長らだ。合併を目指す砺波地域8町村のうち、村の議員はいない。

 1月13日の「4町議員懇談会」。合併後の議員任期や定数について、2月の任意協議会に提案する前に、福光と城端両町の意向を確かめなければならなかった。首長間ではすでに、「平成16年11月」を目標に合併するという話が浮上していた。この時期より遅れると、首長、議会選挙が「雪の季節」と重なってしまう。雪深い五箇3村の事情を考えればベストだが、直前の16年6月に改選する福光、城端議会は、任期がわずか5カ月足らずしかない。

 もう1つ大きな問題があった。村への配慮をいかに示すか。人口の少ない村を優遇する制度は、裏返せば、町部に損をさせることになる。8町村のうち、出席者を4町に限ったのには「割を食う町部に了解をとらなければ、話が進まない」(砺波地域のある町議)という事情があった。

再編後のカギ握る存在
議会の代わり務まるか
 懇談会では、任意協議会の事務局が4つの案を示した。2つは特例をフル活用する案だった。

 「議員だけが特権を使うわけにはいかん」「合併は行政改革だ。たとえ60人でも住民の理解は得られない」。町村議員総勢91人の任期をそのまま延ばす案と、第1回選挙だけ2倍に定数を増やして60人にする案は、議論を待つまでもなく見送られた。福光、城端は、たとえ在任期間が短くても「特例で延長する」手段など使わないことに理解を示した。合併を円満に進めるためだ。

 残る2案は各議会に持ち帰り、次の懇談会で話し合うことになった。

 任意協を開く直前の2月1日。再び集まった4町の議員たちは、法律の上限にあたる「30人」案と、特例を緩やかに使って4人だけ増やす「34人」案で3時間余りも議論を交わした。「最初から30人にすべき」「それでは村に議席が割り当てられない」。進行役を務めた清都邦夫井波町長がその場を仕切り、「34人」を事務局案として出すことにした。

 任期を延長しない条件をのんだ城端、福光。さらに4つの町は「中選挙区制」を採用することで利賀と平、上平、井口の4村への配慮を色濃くにじませた。第1回選挙で各村に割り当てられる定数は「2人」。特例が使えない2回目は「1人」に減るが、村側も、それ以上は要求できない。

§   §   §
 配慮は「矛盾」を生んだ。新市の第1回選挙では、最も住民の多い福光町で1議席あたりの人口が2,265人。最も少ない上平村は498人になる。深刻なのが「4.5倍」にまで広がる「1票の重み」の格差だ。同じ議会で、町の候補が村の候補より得票数が多かったとしても、落選する恐れがある。

 最高裁は衆院選について、人口格差「3倍」を違憲状態の目安にしている。たとえ市町村議選でも3倍を超えてしまえば無効にされかねない。特例の効かない第2回から村の議席を「1」に落とせば、格差は最大「2.3」に収まる。村側は、わずかな議席にも納得せざるを得なかった。

 中選挙区の矛盾は、ほかにもある。広く支持されている候補でも、狭いエリアの支持基盤が弱ければ、当選は難しい。4町の話し合いでも、大選挙区を望む声は出ていた。

 配慮を受けた村側でさえ、ある議員は「本来は大選挙区がいい」と打ち明ける。議席を2人か1人確保できたとしても限られた数だ。「大選挙区になっても、地元候補の当選はあり得る。ほかから票を集めればいいんだ。違う地域の候補でも、旧村を含めて市全体を見渡せる人、本当にいいと思える人なら“自分たちの議員”ではないか」

 中選挙区を設けるのは住民の声を代弁する議員を出すため。その選挙区はまた、有権者に越えることのできない「壁」をつくってしまう。

  統一地方選
直後
合併直前
(平成16年10月)
新 定 数
中選挙区制 第1回 1議席当たりの
人口格差
第2回 1議席当たりの
人口格差
城端町 16 13 5 4 5 2
井波町 14 14 5 4.2 5 2.1
福野町 16 14 7 4.2 7 2.1
福光町 16 16 9 4.5 9 2.3
平村 10 10 2 1.4 1 1.4
上平村 8 8 2 1 1 1
利賀村 8 8 2 1.1 1 1.1
井口村 8 8 2 1.3 1 1.3
96 91 34   30  

(C) 北日本新聞社 記事・写真の転載を禁じます
The Kitanippon Press, All Rights Reserved