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正念場の地方自治 No.52 連載目次 前へ 次へ

第5部 新市建設への助走 残り22カ月 2003.05.30
 配られた分厚い資料の89ページ目に、住民アンケートの見本がとじられていた。「アンケートの中身は協議会の場で決めるべきだ」。小杉町の温井順一議長が語気を強める。新湊市で14日開かれた射水地区の合併協議会初会合は、波乱含みのスタートになった。

 アンケートは新市建設計画の参考にする狙いがあり、事務局が準備した見本には「新市への要望」など住民に尋ねる質問項目が並ぶ。協議がスムーズに運ぶよう配慮がなされていた。だが、小杉町では枠組みをめぐって住民投票にもつれた経緯があり、温井議長は、資料に沿って淡々と進む協議会運営に、不満そうな表情を浮かべた。

積極的な法定協運営を
5地域で大型再編始動
 「小杉の立場も理解してほしい」「いや、この場では合併の賛否は控え、出された内容について議論を深めるべき」

 こんなやりとりのほかにも、委員の質問は相次ぎ、協議は度々ストップした。そのうえ、配られた資料は膨大だった。報告や議案、協議事項などが20件。事務局の説明の多さに、ある委員から「私らの頭では追いつかない」という“苦情”も出された。

 一つひとつ確認するやり方から、すべて説明した後に議論する方法へと急きょ切り替えた。説明する事務局職員は、何度も汗をぬぐう。この日話し合う予定だった合併期日と庁舎位置については結局、次回に持ち越されることになった。

 初回から難航したものの、射水地区の協議は、他の法定協とは異なる印象を自治体関係者に与えた。新年度に入ってから井波町など砺波地域8町村をはじめ、砺波と庄川の2市町、富山市や上婦負など7市町村でも会合があったが、いずれも、事務局案がすんなりと了承されていたからだ。

§   §   §
 法定協は「合併特例法」に基づき、各市町村議会の議決で設立される。前段階の任意協議会や準備会とは違って、合併について「正式に話し合う機関」といえる。

 県内では市町村長や議員のほか、住民から選ばれた学識経験者らがメンバー。だが、数時間に及ぶ協議の場で、積極的な発言はほとんど聞かれない。委員は25−50人と多く、広々とした会場も話を切り出すには重い雰囲気だ。ある法定協の学識経験者は終了後、「よく分からなかったけど、頑張ります」と苦笑いして会場を去った。

 県内で昭和の合併が完結してから37年。当時を鮮明に記憶する人は少なく、「正直、戸惑いはありますね」「これから本当に合併するのか、まだ半信半疑です」と打ち明ける委員もいる。

 かつて主流だった編入合併とは違い、新設合併は旧自治体をすべて解消して新しい自治体をつくり直す。話し合う内容は当然、膨大な量になる。射水地区初会合の終了間際。田所稔大門町長は、ようやく協議のテーブルについた小杉町への配慮をにじませながら「せっかく始まった協議です。課題が多いときは、会合を月に2度でも3度でも開くような、積極的な姿勢でお願いします」と事務局に注文をつけた。

 26日には、黒部市など1市3町が法定協を発足させ、合併を目指す県内5つの地域すべてで協議が本格始動した。いずれの地域も合併方式は「新設」。だが、全国的に話し合いが難航しがちな「新市の名称」や「庁舎をどこに置くか」など協議はこれから正念場を迎える。税や公共料金の調整など話し合う中身は一つひとつが重く、新市の将来に直結していく。

14日にスタートした射水地域広域圏合併協議会
14日にスタートした射水地域広域圏合併協議会。初会合では委員が活発に発言した=第一イン新湊
 合併特例法の期限が切れる平成17年3月末まで、残りわずか「22カ月」となった。県内の合併協議は全国的に見ても遅く、時間は少ない。だが逆に、先行して合併した自治体の手法や反省を生かすこともできる。合併の意義を見失わないためにも、徹底した議論を行う協議会運営が欠かせない。地方分権のかなめとなる「税財源移譲」のあり方も見えない中、地域のビジョンを模索し始めた市町村。第5部「新市建設への助走」は、全国の事例や県内の動きを追いながら、新しいまちづくりを住民とともに考える。

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