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正念場の地方自治 No.58 連載目次 前へ 次へ

第5部 新市建設への助走 電算化の狙い 2003.06.08
 総務課長が、職員から上がってきた決裁文書に目を通す。「文書」といっても、視線の先には紙の束ではなく、パソコン画面がある。内容を読み終えると、画面に表示された確認ボタンをクリック。「見ました」というはんこ代わりになる。福光町役場の仕事風景だ。

 町は平成11年、県内でいち早く「電子決裁」を実現させた。まずは財務会計システムを稼働させ、休暇届や出張命令書などを処理。昨年は稟議(りんぎ)書などの文書管理に手を広げた。ここまでやる自治体は全国でも少ない。

 以前は年に4万2千枚もの伝票が、庁内を飛び交っていた。たまった伝票はバインダーにとじていたが、整理して保管する場所が必要だった。

 電子決裁で、紙の経費を切り詰めた。文書整理専門職を廃止し、人員配置を見直すことで、この4年の間に職員数は8人も減った。町企画情報課の市川孝弘情報係長は誇らしげに説明する。「人の行き来が減りますからね。人員配置がより的確になるんですよ」

 町のIT化はそれだけではない。図書館や健康増進センターなど各施設と役場は、光ファイバーで結ばれている。各事務所には小型カメラとマイクを備えたパソコンがあり、職員同士が画面を通して会話できる。

 「文字通り、顔の見える行政サービスも可能です」と市川係長。インターネットを活用しているため、機器を持つ住民がその気になれば、職員の顔を見ながら問い合わせもできるのだという。

 砺波地域8町村の目指す姿が、福光町にある。

導入の背景に地域戦略
分庁舎方式のかなめに

 8町村は合併の枠組みが決まった昨年12月、「分庁舎方式」を打ち出した。「合併すると、周辺部になって廃れてしまうのでは…」といった住民の不安を解消するのが狙いだ。すでにある8町村の役場庁舎を生かし、新しい市の行政機能を各庁舎に分散させる。

 7日に井波町総合文化センターで開かれた法定協議会第3回会合では、庁舎体制が決まった。企画総務部を福野に、建設部と議会事務局を福光の庁舎に置く。民生部と教育委員会は井波、産業経済部は城端になる。さらに、8町村すべてに窓口業務や地域振興を担う行政センターを設ける。

 ただ問題は、庁舎間の距離だ。それぞれ車で20−30分だが、行き来するのは時間だけでなく経費の無駄になる。

 「電算化がその解決策になる。分庁舎方式のかなめです」と、合併協議会事務局の山畔勝博総務課長は強調する。

 庁舎を結ぶことは、住民サービスとも無縁ではない。「どこに住んでいても、同じサービスを受けられるのが理想です。できれば、1つの窓口で用事を済ませられるようにしたいですね」

 例えば、利賀地区に引っ越してきた人がいるとする。税金については税務課に、保険証は福祉課に申請することになるが、電算化すれば、別々の庁舎に行かなくて済む。「不便なところに、人が住みつくはずもありません。これからの時代はワンストップサービスですよ」

 今はまだ福光町だけが突出し、他の7町村の電算化は遅れている。

 8町村は国の補助事業を申請し、合併前に使える「合併推進債」を使って、来年4月までに整備を終える見通しだ。公共施設に端末を置き、画面を通した健康相談などができるようにする。

パソコンの画面を通して会話するシステム
パソコンの画面を通して会話するシステム=福光町役場
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 仕事の効率化と住民サービスの向上を狙う電算化だが、福光町の市川係長は「本当の狙いは、違うところにあるんです」と打ち明けた。

 全国の自治体が進め始めた「電子自治体」事業。企業はそこに目を付け、売り込み攻勢を掛けている。さまざまな機能を求める行政側の要望に応えようと、企業は技術開発に努め、ノウハウを蓄積する。積極的な自治体には企業が自然と集まり、企業誘致にもつながるという。

 福光町には企業団地や支援策を整えなくても、福井県のインターネット企業が進出した実績があり、8町村は「付加価値」を求めてもいる。

 「いわば地域戦略です。福光町が一歩先を行こうとしてきた理由は、そこにあります。機械を入れるだけでは駄目なんですよ」


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