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正念場の地方自治 No.59 連載目次 前へ 次へ

第5部 新市建設への助走 地域のビジョン(上) 2003.06.11
 「まだ手探りの状態。糸口が見えないんですよ…」。婦中町の清水昌昭企画財政課長は、ため息をついた。町の総合計画は、平成17年度いっぱいで期限を迎える。いつもなら、次の総合計画の策定に向けて詰めの作業に入っている時期だが、今回は事情が違う。

 町は、富山市と上婦負6町村の法定協議会に参加している。「合併特例法」の期限は17年3月末。国が検討している法改正を受け、富山地域の合併が年度をまたぎ、多少ずれ込んだとしても、あと2年に迫る。合併を控えて町の計画づくりの方針は定まらず、総合計画という形にまとめるかどうかさえ決まらない。

 「初めての経験で、どうしていいのか私らにも分からんのです」

せかされる計画づくり
「時間ない」と戸惑いも

 6日、富山市内のホテルの大広間に、清水課長の姿があった。視線の先には婦中町の大島外夫町長をはじめ、富山地域7市町村の首長が顔をそろえ、学識経験者や議長たちと向き合っている。合併後の新しい市の建設計画を審議する委員会だ。

 「新市建設計画」−。合併を目指す法定協議会が住民に示す新市の将来ビジョン、いわば、まちづくりのマスタープランだ。基本方針やメーン事業、公共施設の統合整備、財政計画を中心に構成し、「合併特例債」を使う事業も盛り込まれる。建設計画の策定には、各市町村が現在もっている総合計画などが生かされるが、策定方針について話し合われたのは、この日が初めてだった。

 委員の1人、富山青年会議所の林不二男理事長が発言を求めた。事務局が示した方針案には「新市の根幹となる事業」について「中心部だけでなく周辺部にも配慮」とある。「ここを都合良く解釈されると…。協議を進めるのに問題があるのではないでしょうか」

 森雅志富山市長が各町村に気を配りながら「のみ込まれるのではないかと、心配する住民の気持ちを考えれば、この文面でいい」と切り返す。委員長の宮口としみち早稲田大教授は「中心市街地は空洞化し、市関係者の気持ちも分かる」と続け、事務局に注文をつけた。「均衡ある発展、という表現には注意してほしい。人口の多いところ、少ないところ、それぞれ発展の仕方があるんです」

 委員の質疑は続く。吉村栄二八尾町長は積極的にマイクをとり、「合併前事業はどう扱うのか」「財政計画に早めに着手してほしい」と立て続けに発言した。どんな事業を計画に盛り込んでいくのか、どの自治体にとっても気になるところだ。

 活発な意見交換から、新市建設計画の策定こそが「合併協議のかなめ」だということが、ひしひしと伝わってくる。

新市建設計画の策定方新案などを話し合った富山地域の委員会
新市建設計画の策定方新案などを話し合った富山地域の委員会=6日、富山全日空ホテル
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 県内各地で協議が本格始動して以来、この日ほど、「時間がない」という言葉が繰り返された会合もなかった。スケジュール通りにいけば、9月には、まちづくりの基本方針などがまとまる。各市町村はそれまでに、今ある総合計画で積み残した事業や合併後に必要な事業を洗い出していく。「町の総合計画を見直すことになる。町が何を建設計画に求めるのか、それをまとめるのに1カ月しかない」。清水忠夫大山町長の言葉は、各自治体の担当職員の思いを代弁していた。

 なかでも総合計画の期限が合併後1年分しかない婦中町は、協議のそ上に載せる要望をいかに取りまとめるか、難しい問題を背負う。会合を終えて清水課長は「やっぱり新しい総合計画のようなものが必要なんじゃないですかね…」と、つぶやいた。今ある総合計画は住民アンケートや啓発イベントを開き、策定までに3年の歳月をかけたものだ。町の将来にとって何が必要か、狙いや目的をはっきりさせなければならないからだ。だが、今回は時間が少なく、同じ手順を踏めない。

 地域住民の声を、いかに建設計画に反映させるかは、重い課題になる。全国には住民を交えた議論の場を設け、時間をかけて構想を練るケースもあるが、期限にせかされている市町村にそんな余裕はない。富山地域の法定協議会は建設計画策定の参考にしようと、6千人を対象にアンケート調査する。全国の多くの法定協が取り入れている手法を踏襲したものだ。


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