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正念場の地方自治 No.60 連載目次 前へ 次へ

第5部 新市建設への助走 地域のビジョン(下) 2003.06.12
 黒部青年会議所(JC)が黒部市内のホテルで開いた5月例会の席に、飛び入り参加の女性3人がいた。JCメンバーに交じり、「新しいまちづくり」をテーマにした講演に聴き入っている。

 「きょうの話は面白かったね」。会場を出た朝日町の吉江知佳子さん(22)が切り出すと、同じ朝日町の田中敦子さん(22)と、黒部市の野村恵美さん(27)がうなずいた。

 3人は、合併から20年後の地域像を語り合おうと、新川地域の女性20人で活動を始めた「地域主権型社会」の勉強会に加わっている。これまで「市町の境界」をテーマに話し合い、市町村合併への関心は高い。

 「合併協議の場って見えないでしょう。テレビには偉い人たちが映っているだけで、結果しか分からない。合併は私たちにも関係があるのに、発言する機会がないんです」。吉江さんたちは、勉強会に加わる理由をそう語る。

計画立案、主役は住民
徹底した西東京の試み

 県内の合併協議は、小杉町のように住民投票を実施したケースを除いては、住民説明会やパンフレットの配布、アンケート調査といった形で進められてきた。枠組みが決まった後は合併協議会が公開されている。だが3人は、仕事を休んでまで傍聴できない。「せめて若い人を協議に加えるとか、高校生を巻き込んで将来を考えるとか、柔軟な発想ができないのかしら」と不満顔だ。

 合併まで時間はない。だが、県内の合併協議が画一的な印象を与えるのは、それだけが理由なのだろうか。平成13年に合併して「西東京市」になった旧田無市と保谷市は、市長が住民との対話集会を重ねるなど、徹底して市民参加を進めた。

 10年に任意協議会に設けた「将来構想策定委員会」は委員の大半が一般市民。その委員会が、さらに市民に呼び掛けて自由討論の場をつくった。「互いの市民が相手市長に『もの申す』といった試みや、市長に立候補するならどんな公約を掲げるかを語り合うなど、あらゆる手法を使いましたね」と収入役室の大村美一副参与は懐かしむ。

 構想策定に携わった市民8人を、翌年スタートした法定協議会のメンバーにも加え、新市建設計画づくりに意見を反映させた。合併特集の広報は別刷りにし、任意協から合併までの3年間で計19回、全戸に配った。

黒部市など1市3町の将来像について語り合う黒部青年会議所の新メンバー
黒部市など1市3町の将来像について語り合う黒部青年会議所の新メンバー=黒部市新牧野
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 ヤマ場は、法定協議会が終盤に入った12年の夏。前例のない試みに踏み切った。18歳以上の14万9,000人を対象にした投票形式の「市民意向調査」だ。設問は3つ。

 「合併の賛否」を問う設問は、反対が上回れば協議を白紙撤回するというものだった。事実上の住民投票といえた。2つ目は「新市の名称」。全国公募で集まった3,090通りの名称案から協議会で5つの候補に絞り、最終決定を市民の選択にゆだねた。さらに「力を入れてほしい施策」を、この調査で尋ねた。

 市民は投開票にも立ち会った。透明性を高めるためだ。「立会人に400人を公募したら800人も集まりましてね。結局、抽選でした」と大村副参与。はた目には楽しそうに見えるが、法定協議会を議会中も毎月2回のペースで開くなど「きつかった」と振り返る。

 県内で進む合併協議と西東京市の手法は、まったく異なる。大村副参与は「合併協議は、わがまちにとって合併するのが良いか、悪いかを話し合う場。そのプロセスを公開し、最終局面で市民の判断を仰ぎました」と言う。行政だけで進めると、住民が市の将来に責任を持たなくなり、それこそ「禍根を残してしまう」という考え方だ。

 地域主権型社会の勉強会を呼び掛けた黒部JCは、そこで出た意見を生かして黒部市と宇奈月、入善、朝日各町の「20年後のグランドデザイン」づくりに取り組む。

 「地域の将来を模型で表現できないか」「理論武装する必要もある」

 深夜、黒部JCの事務所ではメンバーが討論を交わしていた。上田芳正理事長は「今の合併は行政主導で、行革ばかり強調される。将来、住んで良かったと思えるビジョンを私たちの手で提案したい」と力を込める。地域のあり方を考えたいと望む住民の声は、決して小さくない。


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