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正念場の地方自治 No.63 連載目次 前へ 次へ

第5部 新市建設への助走 自治振興会 2003.06.16
 「合併は10年、20年の間に風化して忘れられるでしょうが、今この際、山間部の生活改善を強く訴えないと、永く住んでいく者にとっては後悔を残すと思います」

 「町や議員が考えるのではなく、われわれ一般町民が考え、行動を起こさなければ駄目だ」−。

 大山町自治振興会連合会が4月に創刊し、町民に配った「合併問題かわら版」第1号に、こんな文章が寄せられていた。

 大山町は、富山市など他の6市町村と合併して40万人規模の新市を目指す。期日はあと2年。かわら版は、連合会の「活気あるまちづくり委員会」が、町民の一番の関心事をタイムリーに伝えようと発行した。

 「人から押しつけられた合併でなく、みんなで考えていこうと…。そうでなければ発展はありません」。連合会長の山岸昭文さん(64)=大山町東福沢=は、A4版12ページの冊子をそっと広げ、発行の狙いを語った。

 第1号には合併に描く夢から、国や地方が抱える財政問題への不安、反対論まで、さまざまな意見を載せた。町内7つの自治振興会で集めた住民たちの生の声だ。合併で周辺地域になる住民の心情や、衰退していく地域コミュニティーへの郷愁をつづった文章もある。

 「かわら版を2号、3号と続け、住民に情報を送っていきたい」。そう力を込める山岸さんも、合併後の自治振興会のあり方を考えると、不安がよぎるという。

合併かわら版で啓発
存在問われる住民組織

 山岸さんは福沢地区の会長でもある。これまで町政懇談会や、地元に伝わる盆踊りの開催など力を入れてきた。住民の意見を吸い上げては、道路整備や夜間照明の設置など陳情を行ってきた。

 だが、合併するとどうなるのか。陳情については地元の「議員さん」に相談してきたが、合併で削減される議員定数を考えれば、地域から議員を送り出せる保証はない。行政に対する声が、届きにくくなるのではないかという懸念がある。

 合併で自治体が広域化すると、「地域コミュニティー」の役割がますます重要になる。「住民組織が、しっかりしなければならない。しかし、どうすればいいのか」。山岸さんは考え込んだ。

 県内では町内会や自治会、区、地区などと呼ばれる住民組織が、数多く存在する。明治の大合併でできた市町村が、旧村を行政区として残したのが始まりといい、戦前には法整備もされた。国民を戦争に動員する役目を担ったとして戦後の一時期に禁止されてからは、法的な位置づけがないまま地域に根付いた。ごみ当番やお金を出し合って公民館を建てるなど、身近な営みを支えてきた。

 だが最近は、会長のなり手不足や共同体意識の低下など、不安材料を抱えている。そのうえ、政府の「地方制度調査会」が検討している合併後の「住民自治」のあり方もまとまっておらず、肝心の「自治体が向かう先」が見えてこない。

大山町自治振興会連合会の総会
大山町自治振興会連合会の総会。住民自治の在り方が問われている=5月22日、大山町民文化会館
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 いかに住民自治を機能させるか。全国に共通する課題だが、住民組織が逆に行政をリードしているケースもある。

 「小さな自治」の先進地として知られる広島県高宮町。まず立ち上がった川根地区の振興協議会は、都市住民向けの研修施設の建設や独居老人の給食サービスなどを次々と行政に提案し、自ら運営に携わった。他の地区もそれに触発され、独自の産業振興や福祉事業に取り組む。中国山地の過疎の町という事情もあり、住民には「地域は自分たちの手で守る」という意識が浸透している。

 ある住民は言う。「小さい自治をやるには、昔の旧村を復権させるつもりでやらないと。権限を自ら獲得し、活動する。行政から仕事を奪うぐらいの気構えがいる」

 県内では、町内会などを校区単位の自治振興会が束ね、さらに市町村や県全体をまとめる連合会組織が、網を張り巡らせている。住民活動を発展させる土壌はある。

 「富山地域は旧町村部に『区制』を導入し、権限や予算の一部を残すというが、それは行政システムでしかない。合併後の住民自治の姿を話し合う必要がある」。山岸さんは活動のあり方を見直すべきだと考え始めた。肝心なのは、住民自らが行政を動かすことだ。


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