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正念場の地方自治 No.64 連載目次 前へ 次へ

第5部 新市建設への助走 「基礎的自治体」とは 2003.06.17
 「配慮しすぎじゃないのか。昭和の大合併で人口の最低基準を設定したのだから、今回も標準を設けていいはずだ」。4月末、東京都内のホテルで開かれた政府の「地方制度調査会」の総会で、委員を務める自民党の野中広務元幹事長が甲高い声でまくしたてた。

 専門小委員会がまとめた「今後の地方自治制度のあり方」の中間報告案について、国会議員と地方6団体の代表11人が次々に意見を述べた。

 焦点の1つとなったのは、「基礎的自治体」と呼ぶべき市町村の人口規模。昭和の大合併では「8千人」が目安にされたが、報告案は強制合併を警戒する小規模町村に配慮し、数値目標を示さなかった。「示すべきという意見もあるが、慎重な意見もある」と、あいまいな表現にとどめたことが、与党の実力者には不満でならなかったようだ。報告案は一部を修正のうえ了承されたものの、他の委員からも、案に盛り込まれた「分権時代の基礎的自治体」の定義を問う意見が相次いだ。

見えぬ定義に批判集中
どこにある合併の理念

 「地方交付税を受けない団体をいうのか、あるいは合併すれば自然に基礎的自治体になるのか。まったく分からない」。全国町村会の山本文男会長(福岡県添田町長)は顔をしかめた。

 市町村は、基礎的自治体を目指さなければならない−。地制調で語られ続けてきた合併推進の理由だが、その意味はあいまいだ。財政的に自立した自治体を指すなら、ほとんど存在しないことになる。税財政のシステム上、全国の95パーセントにあたる市町村が、財源不足を補う地方交付税を受けているからだ。

 山本会長は、お金のない市町村がいくら集まっても、財政力が高まるはずがないと強調し「現実をもう少し直視してほしい。面積など自然条件もある。感情だけで合併しないと言ってるんじゃない」と言葉を荒げた。

 この日の争点はほかにもあった。合併後の旧自治体エリアに置く「地域自治組織」のあり方だ。

 台所事情の苦しい国にとっては地方財政をスリム化させるためにも、市町村合併が欠かせない。地制調は、歩調を合わせるように合併推進を志向するが、小さな町村にも配慮する姿勢を見せ、地域自治組織を提案した。

 2つのタイプがあり、1つは、任命制の長を置く政令指定都市の「行政区」に準じた組織だ。首長に意見を述べる諮問機関を内部に持つ。もう1つのタイプは法人格があり、公選の議決機関を設けることができる。

 「それでは、何のために合併するのか分かりません」。野中元幹事長がすかさず矛盾を突いた。旧自治体エリアの地域自治組織に“議会”まであるのなら、意思決定プロセスは通常の議会との二重構造になってしまう。「議員を減らせる」などと行革をメリットに掲げてきたはずの合併が、意味のない再編になるという懸念を、厳しい口調ににじませた。

 中間報告は、国と市町村双方の主張のバランスを取ったものだ。合併をあくまで「自主的」としながらも、知事に勧告権を与えるなど「強制」をにおわせ、明確なスタンスを打ち出していない。

中間報告を決めた地方制度調査会総会
中間報告を決めた地方制度調査会総会=4月30日、東京都内のホテル
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 総会後の記者会見で諸井虔会長は「少子高齢化や経済情勢をにらみ、住民に満足のいくサービスを提供していくには、自治体の規模拡大で力をつけることが不可欠」と強調した。多くの合併協議でも、将来の自治体像について「手厚い行政サービスを担えるだけの規模が必要」と説明されてきた。しかし、「地方分権時代」にふさわしい規模とは何か。住民が真に求めるサービスを見極めていく作業が必要だが、国の議論からは、しゃにむに合併を推し進める姿勢しか見えてこない。

 小泉純一郎首相が唱える地方税財政制度の改革も混とんとしている。「分権の受け皿づくり」を理由に平成の大合併が急速に進む一方で、本来示されるべき分権への道筋は不透明なままだ。

 山本会長は、ひときわ力を込めて言い放った。「合併を進め、町村をどうしてもなくすのなら、それなりの理念と将来像ぐらいは示してほしい」。最終報告をまとめるのは11月。自治体再編と地方分権の行方を、見定めなければならない。


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