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正念場の地方自治 No.65 連載目次 前へ 次へ

第5部 新市建設への助走 三位一体の改革(上) 2003.06.18
 「三位一体」という言葉がニュースをにぎわせている。古くはキリスト教の神である父と子、聖霊の関係を示す「三位一体説」で知られ、公開されたばかりの映画マトリックスのヒロイン名「トリニティー」も三位一体の意味。キャッチフレーズ好きな小泉純一郎首相が用いるようになってからは、閣僚や官僚、国会議員、市町村職員にいたるまで「三位一体」から目が離せなくなった。

 昨年の骨太の方針に盛り込まれた「三位一体の改革」がそれだ。地方への補助金を大幅に削減し、交付税制度も見直したうえで、国が握っている税財源の一部を地方に移す。この3つは、国と地方の関係を大きく変える構造改革の柱だが、議論は迷走を続けている。

迷走する議論に批判
税源委譲訴える自治体

 「財源的な裏付けがなければ、新市建設の将来ビジョンも描けない」。荻野幸和黒部市長が不安を漏らすと、中沖豊知事は我が意を得たりとばかりに持論を語り始めた。

 5月26日、黒部市など1市3町で発足した法定協議会が、県に合併重点支援地域の指定を求めた席だった。三位一体の改革を議論する政府の「地方分権改革推進会議」が、税源移譲の先送りと受け取れる意見書試案を出し、全国の地方自治体が一斉に反発を強めたさなかの一場面だ。

 「そもそも今回の会議は、国民不在で議論を進めている。三位一体とは何のことなのか、国民にもっと分かりやすく説明すべきだ」。中沖知事は語気を強めた。

 改革の背景には、国が税収の6割を握っているにもかかわらず、福祉や教育など実際にお金を使う段になると、逆に地方が6割を支出しているという問題がある。差額の大半は、国が補助金や交付税で地方に配分してきたが、この仕組みが地方行政をがんじがらめに縛っている。地方自治体の自立を妨げる一因になっていると指摘される。

 三位一体の改革のうち最も重要といえるのが、「税財源の移譲」だ。それを先送りし、補助金や交付税の削減を進めるとなれば、分権が進まないばかりか自治体の財政は苦境に立たされる。

 知事は、5月23日に東京で開かれた全国知事会議の地方自治確立対策委員会でも「国は地方に『飯を食わずに仕事をせよ』と言っているようなものだ。地方は命がけで行財政改革をやっている」と強調。荻野市長にも同様の意見を述べたうえで「行革が進んでいないのは、地方よりも国。公団の統廃合を見ても明らかだ」と語った。

 この日の知事の言葉からは、分権会議が地方の実情を把握していないことへの不満とともに、複雑な地方税財政や国・県・市町村の「3層構造」の行政システムが周知されておらず、「事の重大さ」がうまく伝わっていないことへのもどかしさがうかがえた。

中沖知事(左)と懇談する荻野黒部市長(右)ら
中沖知事(左)と懇談する荻野黒部市長(右)ら。知事は進まない税財源委譲などの改革を批判した=県庁
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 今年1月に北日本新聞社がまとめた県内首長へのアンケートでも、「行政は国主導だ。地方の権限拡大を必ず実行してもらいたい」(米沢政明入善町長)、「地方の自主財源を確立させていくことが必要。中央集権型システムは弊害が目立つ」(中屋一博滑川市長)などの声が目立った。

 弊害とは何か。無駄な事業の温床となってきた「補助金行政」が典型的だ。改修すれば使えるはずのハコモノも、補助金がたくさん出るという理由から、建て替えるケースがそれに当たる。補助金の画一的な基準も、無駄を生んできた。

 長野県栄村が取り組む農地整備事業「田直し」は、補助金に頼らない試みとして注目を集める。農家の意向をくんで広げた水田の面積は、1枚あたり平均8アール。画一的な国の補助事業では30アールに広げなければならず、補助金をもらってもお金がかかる。無駄がなく、棚田が多い栄村の実情にも合っている。裏返せば、補助金行政は、過剰ともいえるサービスを生む危険をはらんでいる。

 県内多くの首長が、真の分権の実現には「税源移譲」が欠かせないと訴えてきた。しかし、全国の知事、市町村長、地方議員がこぞって声を上げても、改革は遅々として進まない。省益を手放したくない中央省庁の対立構造が、大きく立ちはだかっているからだ。


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