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正念場の地方自治 No.68 連載目次 前へ 次へ

第5部 新市建設への助走 道州制 2003.06.23
 「私たち地方行政に携わる者は今、大きな時代の転換期に立ち会っている」−。将来の県と市町村との役割分担をはじめ、府県合併や道州制への対応を検討するため、県が5月に設置した庁内組織「県のあり方研究会」の初会合。委員長に就いた齋田道男経営企画部長は、あいさつの中で画家のポール・ゴーギャンの「われら何者なるや」という言葉を紹介し、「新たな地域経営のあり方を確立するため、1人ひとりがあらためて県の存在理由を問い直してほしい」と強調した。

 市町村は明治、昭和に次いで3度目の大きな再編に直面している。だが、都道府県は100年以上、その名称も区域もほとんど変更されていない。

 昭和40年に地方制度調査会が「府県合併に関する答申」を出した。これを受けて、自発的な合併を可能にする特例法案が国会に提出されたが、廃案となった。都道府県は事実上“国の出先機関”の役割を担っており、総務省は「府県合併となれば、国の統治機構そのものも変化を迫られることになる。国民にも、現在の都道府県の姿が定着しているためなのだろう」と説明する。

薄れる県の存在意義
東北は3県合併目指す

 ところが、ここにきて風向きが変わってきた。「平成の大合併」が進めば、市町村の行政能力は大幅に向上することが予想される。市町村の行政を補完している都道府県は、その役割の見直しを迫られるのが確実で、県職員からも「県は無用の存在になりかねない」という声が漏れる。

 政府の地方制度調査会も、4月に発表した中間報告に都道府県制度の改革を盛り込んだ。

 今後の都道府県の役割について、市町村を補完する機能を縮小し、高度なインフラ整備や国土・環境の保全など広域機能を強化すべきと指摘。自主的な合併を促すため、手続きを簡素化するよう改正を求め、その先の道州制にも触れている。都道府県を廃止して全国をいくつかのブロックに分けて「道」や「州」を置き、そこに国から権限と税財源を移すという考え方だ。

 研究会の発足に当たって、齋田部長が「存在理由の問い直し」を訴えたのも、国と市町村の「中2階」にある県の改革が避けられない情勢となっているからだ。齋田部長は「そう簡単に道州制が実現するとは考えにくいが、国と県、市町村の機能分担などについて研究を進める必要がある。押さえるべきポイントは、押さえておかなければならない」と語る。

 富山県だけではない。新市の建設を後押ししながら、府県合併や道州制を検討する動きが全国に広がっている。

県が設置した「県のあり方研究会」の初会合
道州制などへの対応を検討するため、県が設置した「県のあり方研究会」の初会合=県民会館
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 こうしたうねりを起こす原動力となったのは、青森、岩手、秋田の北東北3県など、地方の動きに違いない。地制調が中間報告で「都道府県合併で条件が整った団体を先行的に道州に移行させる」とする考えを打ち出したのも、3県を念頭に置いたものとみられる。

 3県は海外に合同事務所を開設したり、産廃税を共通条例化するなど、多くの事業を共同で行っている。増田寛也岩手県知事は昨年秋、これらの実績を踏まえて青森、秋田の両県知事に3県合併を提唱した。

 さらに3県の若手職員でつくる「北東北広域政策研究会」は3月、中間報告書をまとめた。3県が平成22年に合体し、「東北特別県」を創設。その5−10年後には宮城、山形、福島の3県を含めた「東北州」への移行を目指すとしている。

 青森県庁の地方分権推進グループは「若手の自由な発想による自主的な研究」としながらも、「1県だけですべての行政課題に対応できる時代ではない。国内でも特に厳しい経済状態にある3県はなおさらだ。国の処方せんを待つのではなく、地方自らの手で新しい制度を設計する時代になっている」と力を込める。

 明治維新以降、地方行政制度はすべて中央政府が決めてきた。新たな仕組みに作り替えようという地方からの動きは、中央集権制度の限界をあらためて浮き彫りにしている。「明治維新は南からだったが、“平成の維新”は北から起こしたい」。政策研究に携わった3県の若手職員に共通する思いだ。


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