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正念場の地方自治 No.70 連載目次 前へ 次へ

インタビュー編 藻谷浩介氏 日本政策投資銀行地域企画部参事役 2003.06.25
 地方自治のあり方を、識者や自治体関係者が語るインタビュー編で連載を締めくくる。今回は地域振興のスペシャリスト、日本政策投資銀行地域企画部の藻谷浩介参事役。全国の自治体や商工団体から引っ張りだこで、昨年こなした講演は250回を超える。全国で訪ねたことのない市町村は残り3村だといい、県内の事情にも精通している。全国の事例を交え、まちづくりのポイントを助言する。
地域エゴ捨てまちづくり

合併が各地で進めば、自治体は新しいまちづくりを迫られる。

 合併論議は、自治体に何ができて何ができないかを、冷静に考えるチャンス。まじめに考えた自治体の結論には、必ず入っている要素があります。1つはコストダウンの方法。もう1つは、どうやって“売り上げ”を伸ばすか。つまり住民の満足度を上げ、人口や税収を増やす方策です。

 これは自治体によって違う。富山県内はハードが立派で、地図の市街地はにぎわっているように見えます。ところが実際には、金沢に客が流れている。さらに将来は、新幹線が来ます。東京まで2時間半ぐらい。そうなると、新潟市で起きたことが、富山県でも起きる可能性があります。

新潟ではどのようなことが起きたのか。

 人口は新潟の方が多いのに、金沢の方がにぎわっている。なぜか。東京に吸収されたんですよ。東京から日帰りできるようになり、ホテル業界は不況に陥りました。次に新潟周辺の支店などを統合する動きが起きた。離れていたからこそあった雇用が、一定数、確実に失われるんです。新幹線にはそんな側面もある。

いわゆるストロー現象。県内のある市の幹部も、そうならないために、合併で求心力のある都市を目指すという。吸収される流れは、食い止められるのか。

 吸収される要因は、経済原理によるものです。抵抗するには、経済とは異なる要素が必要。吸収されなかったまちから、それを学べます。

 新幹線が来て人口が増えた市に、岩手県盛岡市があります。開通した昭和57年ごろは23万人余りで、今は28万人。中心市街地は富山市より2割ほど小さいけれども、たくさんの人が住む中層マンションの街です。中心部の人口密度は富山市の2−3倍。オフィス街も集中していて、商店街が維持できている。雰囲気のいい商店街がいくつかあり、歩くと気持ちがいいので「都市型居住」というライフスタイルが生まれました。

 最大のポイントは、人が街を歩いていること。店が最低限維持できて、人が歩くようになると、あとは自然に人が集まって店が増えていく。

 これが都市間競争や観光、地域振興には非常に重要なんです。

藻谷浩介氏
 もたに・こうすけ 昭和39年山口県生まれ。東京大学法学部を卒業し、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)に入行。日本経済研究所研究員などを経て現職。著書に「中心市街地活性化のポイント」など。
人や店の集積が大事

にぎわっている空間が必要ということか。

 人や店が集積していなければ、お金を落としていかない。例えば「きときとの魚」と称しても、丘の真ん中に飲み屋があるのと、そばに新鮮な魚市場があるのとでは、お金の落ち方が全然違う。

投資や人口を集中させることになるが、周辺部から不満が出るのではないか。

 合併は大同団結なんです。地域エゴを言うほど足の引っ張り合いになり、全体として魅力のないまちになってしまう。失敗例は、直江津市と高田市が合併した新潟県上越市。両方に配慮して中間の春日山地区に市役所を移し、新しい市街地をつくりました。ところが、まちにならなかった。そのうちインターの近くにショッピングセンターが来て、さらに新幹線駅を高田の近くに造ると言い始めている。際限なく、ばらまきを続けていくことになります。

地域、産業振興に欠かせないものは何か。

 1つはミクロの視点。校区ごとに自治組織を置き、住民の幸せに直結するものを自分たちで考え、工夫すればするほど予算がもらえる仕組みにする。競争が生まれ、地域が活性化されます。

 もう1つはマクロ、グローバルな視点です。

 「世界」「環日本海」などといった視点から人を呼べるまちをつくるため、ソフト事業を展開できる地域を徹底的に強化する。地域と言っても、合併したのであれば、旧市町村単位という中途半端な線引きでは駄目ですよ。よく考えてほしい。


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