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正念場の地方自治 No.72 連載目次 前へ 次へ

インタビュー編 山本文男氏 全国町村会長 2003.06.27
 東京・永田町にある全国町村会館の一室に、低く、しゃがれた声が響いた。「国はやみくもに合併、合併と言ってきた。それが実態だ」。全国町村会の山本文男会長は、約2,600町村の思いを代弁する。政府の地方制度調査会委員も務め、国と地方が“つばぜり合い”を繰り広げる議論の最前線に立つ。提唱する市町村連合の考え方を説明し、合併へと追い立てられることのない「自主的な選択」の大切さを訴えた。眼光は鋭い。
あくまで自主性尊重を

地方制度調査会は、合併の理由を「基礎的自治体になるため」としている。「基礎的自治体」とは何か。

 基礎的自治体とは、規模にかかわらず、自力で運営できる自治体のことです。人口の多い少ないで区別するものではありません。人口が少なくても、税収が多いところは運営できる。

 だが国はそう考えていない。未合併の市町村には「ある程度の人口がないと自立する力や人材を確保できないから、合併で基礎的自治体をつくる必要がある」と言い張っている。言うのは簡単ですが、実際にはそうはいかない。地形などを理由に、合併できないところはいくらでもある。

国が合併を進める一方で、全国町村会は「市町村連合」を提案している。基本的な考え方とその狙いは。

 今ある市町村を残しつつ、一緒にできる仕事は共同で処理しようという考え方です。

 法律で定められた事務のうち、広域で行う仕事を母体の市町村から分離させる。例えば道路整備や農林水産、介護保険や国民健康保険などです。事務に必要な職員数を、連合に派遣する。課税権はないが、国の補助金や、母体となる市町村からの負担金で運営する。既存の広域連合を発展させたもので、構成市町村には助役や収入役を置かないなど、より効率を重視したものになります。

 この制度があれば合併せずに済む。あくまで、合併を前提としたものではありません。合併できない、したくない市町村が連合等をつくるという意味です。地制調は「広域連合は将来の検討事項」としており、合併特例法の期限後に向けて新法を定めるとき、一緒に検討していただくことが私どもの願いだ。そうなっていくと思います。合併できるところは合併し、市町村連合が望ましいところはそうすればいい。

連合長を置き、公選にするという。屋上屋を架すことにならないか。

 絶対になりません。あくまで仕事は分かれる。担う仕事、決める事柄が違うので、権力の二重構造にはならない。

合併や連合といった制度を使わず、単独のままで多様化する行政サービスに対応できるのか。

 それはできないかもしれません。単独では難しい。人口と税収が多い自治体と、少ない自治体を比べれば、劣るのは確かです。そのためにも市町村連合があれば、大きな自治体と同じことができます。

山本文男氏
 やまもと・ふみお 大正15年福岡県生まれ。昭和38年に福岡県添田町議に初当選し、46年から添田町長。現在9期目。平成11年から全国町村会長。社会保障審議会委員なども務める。
「市町村連合」を提案

標準の人口規模を、新法で示すべきだという意見がある。

 国は、今ある3,200余りの自治体を1,000にする数値目標を示している。人口規模を示さないと、合併が予定通り進まないから困るわけです。本当は数字を出したい。それができないのは、合併が強制的になると批判されるからだ。仮に「1万以下は小規模なので合併しなさい」と強要されることになれば、1万−3万の自治体は合併しなくてもいいのか、ということになる。理屈が成り立たない。私どもは強制はやめなさいと主張していますし、地制調も自主性を尊重するとしている。

特例法の期限後、合併はどのように進むのか、または進むべきだと考えるのか。

 地方交付税は、地方が分け合うお金です。ところが、合併に伴う国の財政支援策は交付税を使うため、合併しないところからも金を持っていくことになる。合併しない自治体にはしわ寄せがくるだけで、行政運営が大変になる。新たな財源がないからね。だからこそ市町村連合の制度化を提案している。

 国は新法に、財政支援を盛り込まないと言っている。しかし、合併をどうしても進めるのなら、支援の方法を変えるべきではない。その場合も、あくまで「自主性」を尊重しなければならない。


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