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正念場の地方自治 No.73 連載目次 前へ 次へ

インタビュー編 森 雅志氏 富山市長、富山地域合併協議会長 2003.06.28
 「バラ色の合併を描いているわけではありません」。森雅志富山市長は市長室のソファから身を乗り出し、何度もそう語った。人口42万人の県都へ−。協議の舵(かじ)取り役を務める市長は「合併する理由は、徹底的なリストラにほかならない」と言い切る。団塊の世代が一線を退いた後のいびつな人口構成、国と地方の財政危機にいかに対処するのか。「将来の世代が悲観せず、希望を持てる都市づくりには、合併による構造改革が欠かせない」と訴え、その“戦略”を語り始めた。
将来見据えた都市構造に

32万都市の富山は十分に大きい。なぜ、合併なのか。

 かつて呉羽町が富山市と合併したのは、財政的に苦しかったからです。北九州市は、政令指定都市を目指してできた。合併の利益が、具体的で分かりやすかった。だが今の合併は、根本的に違うと僕は思っている。

 生産年齢人口はどんどん減っていく。それでも将来の世代が希望を持てる自治体であるには、30年、50年とやっていける都市構造をつくらなければならない。だから今からリストラを進めるんですよ。合併せずに、効率的な行政を実現するのは困難です。

 第2の理由は財政状況でしょう。国と地方の借金は700兆円と言われ、もう増やせません。自治体の構造そのものを変えなくてはならない時期です。「わがまちにとって得か損か」ではない。地域全体で効率よく、しかも力のある自治体を目指すべきなんです。

50万都市構想が崩れて、次善の策のようになったという人もいるが。

 そんな構想、僕は言っていないし、人口ありきの合併論議はおかしい。共感できるところと合併しようと、広域圏で仕事をしてきた11市町村に声をかけ、結果として7市町村になったということ。神通川、常願寺川という大きな河川の流域でね。森林や農地のある上流と、富山市など下流が一体となって補い合えます。新しい市域の中で全体を考えていきたい。

旧町村エリアを、政令指定都市の行政区に準じた“区”にし、予算の一部を充てる提案には、どんな意図があるのか

 今ある都市を急激に変質させるのは避けたいし、まちを寂しくしてはいけないと思う。市域が広くなっても、合併前と変わらないサービス水準と、自主的な営みを維持する手当てが必要です。

 これからの話し合いですが、“区”には「行政センター」を置きたい。スケールメリットが生きる事業は本庁でやり、旧町道の側溝の維持など、地域ごとに目配りした方がいい事業は行政センターでやる。事業によって分けるという考え方ですね。

富山市にあるような小学校区ごとの「地区センター」も提案している。地味にも見えるが、全国的に例がない。地区センターは建てるのか。

 市役所の出先が、小学生でも歩いていける距離にできるわけです。富山市の場合、本年度から2カ年かけて、地区センターにテレビ電話を置きます。これは申請書などもはっきり映る。本庁とやりとりでき、職員も当然その場にいますから、戸籍や住民票の手続きなど本庁まで足を運ぶ必要はなくなりますね。

 既存の施設が使えれば使い、必要なら建てることになるかも。こういうものこそ「合併特例債」に、なじむと思います。

森 雅志氏
 もり・まさし 昭和27年富山市生まれ。中央大学法学部卒。県議会議員を経て、平成14年1月から富山市長。現在、県市長会長、富山地域合併協議会長などを務める。
効率的な自治体目指す

新市建設に向けて抱える課題は。

 これまで富山市を含む周辺地域は…県全体もそうですが、広く、薄く発展してきました。「均衡ある発展」という言葉を使ってね。それは裏返せば、特徴や拠点、へそのないまちになるということ。満遍なく社会資本投資するのは無駄だし、維持にもお金がかかる。

 高い都市機能をもった大拠点と、地域の伝統や文化に息づいた地域ごとの拠点、そして自然あふれる農村や山林、海がある。めりはりの利いた投資で、それぞれの魅力と機能を発揮できる都市づくりを目指したい。

三位一体の改革の行方も影響しそうだが。

 最初に国から地方への「税源移譲」があるべきです。しかし、移される財源が所得税になるにしろ消費税になるにしろ、経済が活発で、消費意欲のおう盛な地域でなければ、恩恵に預からない。それまでにどんな投資をすべきか。合併はその第一歩だと思っている。

 誰にでも舵取りができたような右肩上がりの時代ではありません。困難な状況ですが、じっとしていてはいけない。


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