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正念場の地方自治 No.74 (最終回) 連載目次 前へ

インタビュー編 中沖 豊氏 富山県知事 2003.06.27
 正念場を迎えているのは市町村だけではない。住民に最も身近な「基礎的自治体」の再編が進めば、100年以上にわたってその名称、区域とも変更されることのなかった都道府県も、おのずと変革を迫られる。「平成の大合併」の完了後をにらみ、国、地方レベルでは府県合併や道州制論議がスタートしている。連載の最終回は中沖知事。県政のかじ取りを担う立場から、県と市町村、そして地方自治制度の将来を展望する。
住民参加の仕組み必要

県内で自治体の再編が進もうとしている。「平成の大合併」をどう受け止めているのか。

 明治、昭和に続く今回の大合併は「地方分権」がキーワードです。地域のことは、住民に最も身近な市町村が責任を持って行えるようにする−。そのためには、住民ニーズの多様化や少子高齢化に対応できる足腰の強い市町村が求められているわけです。県内では35市町村が14程度に再編される見通しですが、住民の意思を尊重し、主体的な議論が進んだという印象を抱いています。

合併する自治体と、しない町村では、規模で大きな格差が生じる。

 県内では今も、人口30万人強の中核市と1,000人程度の小規模村が併存しています。ですから、県と市町村の関係は、基本的には変化はないですね。ただし、新たに誕生する市には、より多くの権限が移譲されることが予想されます。行財政基盤のぜい弱な町村は、規模を拡大した自治体と同じサービスを提供していくのは難しいかもしれない。小規模町村は、広域行政の活用でサービス維持に努めるべきですが、それでも解決できない課題には県が従来通り協力します。

県の役割も変化を迫られるのでないか。

 当然そうなるでしょう。町村が市になれば、県の社会福祉事務所の仕事は市に移りますし、その他の権限をゆだねる可能性もあります。そうなれば、県はもっと広いエリアを守備範囲に、産業振興や環境保全を担ったり、市町村に高度な知識や技術を提供する役割が求められるはずです。

 県は5月に各部の次長らでつくる「県のあり方研究会」を設置しました。市町村と県、県と国との役割分担のほか、府県合併や道州制などについて研究を進めます。

青森など北東北3県では、府県合併を模索する動きがある。県は、どんな枠組みを想定しているのか。

 府県合併は避けて通れない課題ですが、県域を越えた広域的共同行政を積極的に推進するのが先決です。その枠組みは新潟を含む北陸4県の「越の国圏域」が最適。共通の歴史風土を備え、4県合わせた名目GDP(国内総生産)は世界第19位にランクされるほど豊かです。環日本海時代の玄関口として、この圏域の重要性はさらに高まるはずです。

氏
 なかおき・ゆたか 昭和2年富山市生まれ。東京大学法学部を卒業し、地方自治庁(現総務省)入り。県総務部長、県教育長などを経て55年から現職。現在6期。著書に「高志の国から」など。
「国主導の合併」を危ぐ

府県合併は、道州制をも見据えて議論を進める必要がある。

 道州制をめぐり、合併した府県を「道」や「州」と位置付ける案や、国の出先機関とする案などがあります。私は分権推進の立場から、府県を統合した組織に、国の権限をゆだねる方式が望ましいと思ってます。道州制は国のあり方そのものを変える可能性があるわけですから、議論を深めていくことが大切です。

「三位一体」改革で、国と地方の関係がクローズアップされた。どんな関係が理想なのか。

 日本の地方自治制度はすぐれた仕組みですが、問題点も多かったんですよ。例えば、機関委任事務。住民に直接選ばれた知事でも、国の出先機関の“局長”ぐらいの位置付けです。自治という観点からは、不適切としか言いようがない。機関委任事務は12年に廃止され、地方主体の制度に純化されつつありますが、依然として税源移譲は進みません。三位一体改革の内容も不明確なものだったでしょう。

 中央省庁は、権限も財源も手放すべきなのです。国は国防や外交、司法などの分野に専念し、内政は地方に任せればいい。行政と住民の距離が近いほど、ニーズに即した施策が可能で、住民の監視の目も行き届く。地方自治の本旨です。この問題は「権限を分け与えて」という発想では前進しません。「分権」ではなく、もっと「地方集権」を唱えたいと思います。

おわり

〈取材担当 政治部・鶴木義直次長 社会部・本田光信次長 高岡支社編集部・中谷巌記者〉


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