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町・村 名前は残るかー合併・とやまの課題 連載目次 前へ 次へ

3. 2つの「猪谷」 2003.11.09

 岐阜との県境に位置する細入村猪谷地区。古くから飛騨に通じる街道が整備され、藩政期には関所が設けられた。山々や神通川に囲まれ、独自の文化をはぐくんできた。

細入の名に親しみ 慣れた通称に愛着も

 「高校時代、友達に住所を『細入村猪谷』って言うのが恥ずかしかった。雪深いというイメージもあるし…」と言うのは猪谷出身の女性(26)。金沢市内で働くが、家業の手伝いで時々帰省する。「故郷を離れてみて、細入の名前に愛着を感じるようになった」

 細入村は、富山市と上婦負でつくる富山地域合併協議会に参加。新市名は今月末の協議会で決定する見通しだ。字名についてはまだ協議事項に上がっていないが、基本的に「現市町村に任せる」という考えだ。

 村は、早めに情報提供し住民の議論を深めてもらおうと10月下旬、字名についてのたたき台を村内10地区の総代に示した。12月から来年1月に掛けて地区総会で意見を集約するが、課題のひとつが他の市町村と重複する字名の扱い。隣接する大沢野町とは笹津、猪谷の字名が重なり、村は字名の前に現町村名をつける案と、「東」「西」をつけて区別する案などを提示している。

国道41号沿いに取り付けられた案内標識
国道41号沿いに取り付けられた案内標識。字名に対する住民の思いはさまざま=細入村猪谷

 「頭に東や西を付ける必要はないでしょう」。細入村立猪谷関所館の中村哲郎館長(71)は、村の立体模型を前に力を込める。

 両町村は神通川が境目。2つの猪谷は神通川を挟んで両岸にあり、地元では細入側を「西猪谷」、大沢野側を「東猪谷」と呼び合ってきた。西猪谷は富山藩、東猪谷は加賀藩の直轄地。行き来がなかったことに加え、古くは両藩の石高の差などから住民の間でわだかまりがあったという。

 昭和42年、児童数減少に伴い両町村は組合立の猪谷小を細入村に建設。東西の子どもたちが同じ学校に通うようになったのを機に交流が生まれた。中村館長は「若い人たちは東、西と意識しなくなった。猪谷に細入と冠した方が自然」と話す。

 住民の間には「細入猪谷」を望む声が目立つが、「統合によって小学校の名前が変わる時代。まったく新しい地名になっても抵抗はない」という食料品店経営の男性(53)の意見も。大沢野町猪谷の女性(51)は「言い慣れた東猪谷、西猪谷がいい」とつぶやいた。

 住民たちのさまざまな思いを含んだ字名論議は、まだ始まったばかりだ。


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