ノーベル化学賞に田中氏(富山市出身) 目次へ >>ホームへ
おとなしくてまじめ、頑張り屋 − 幼少時の横顔 2002.10.10
 とにかくおとなしくてまじめ。頑張り屋で優しい面もあった―。田中耕一さん(43)の小中学校時代を知る同級生や恩師は「偉大な化学者」をこう評した。小学校から化学などの理数系に強い興味を持ち、勉強はつねにトップクラス。友人には丁寧に勉強を教える面倒見のいい一面もあった。粘り強く研究を続け、自由な発想で栄誉を手にした田中さんは、多感な幼少時代を過ごした富山で、既に化学者としての片りんを見せていた。

 小中学校と同級生で、実家が近所だった野村哲男さん(43)=富山市藤の木台=は「とにかくまじめを絵に描いたようなヤツだった」と振り返る。友人数人と鬼ごっこをしたときのエピソード。「鬼になると、時間がたってみんな家に帰っても、必ず家まで探しに来た。ルールを曲げるのは大嫌いだった」

 真っ直ぐな性格で「冬場でもピン伸びた背筋が印象的だった」と野村さん。「こうちゃん」と呼ばれ、勉強で分からないところを聞くと、誰にでも分かりやすく教えてくれたという。「こんな栄誉を取るなんて、こうちゃんは同級生の誇り。もう『世界のこうちゃん』ですね」と喜んだ。

 本格的に化学に目覚めたのは小学校時代。当時はイメージや発想を重視した理科教育に力を入れていた。小学校4−6年まで担任を務めた、上市町の沢柿教誠教育長が大学時代に化学を専攻していたこともあり、児童全員が一日中でも、化学に親しんでいた。

 沢柿教育長は「おとなしく、周りの意見を尊重しつつも、ユニークな発想力があった」。ホウ酸を使った実験で、温度が下がって出てきた結晶を「雪が降ってきた」と表現したことに驚いたという。「化学にはこうした独特の発想が不可欠。当時の教育が生んだ成果だとしたら、恩師として大変うれしい」と偉大な教え子に目を細めた。
先端科学への興味表現 − 小学校の読書感想文 2002.10.10
 田中耕一さんが富山市八人町小4年のときに書いた読書感想文「空中都市008を読んで」が、昭和45年の第4回富山市良書推せん図書感想文コンクールで小学校の部銅賞に選ばれている。先端科学に興味を持ちながらも、自然は壊れず残ってほしいと願う気持ちが表現されている。

 同書はSF作家、小松左京さんの作品で、21世紀の科学の粋を集めた夢の空中都市が舞台。すべては市中央の電子脳センターで管理・運営され、高速道路をエアカーが走り回る。

 田中さんは家を空気で浮き上がらせ、引っ越しする場面に触れ、「ぼくも、前から、自分のうちを夏は山や海に近い所へ、冬は雪のふらないあたたかい所へ、空気でつつんで自由にひきこせたらなあと考えた」と書いている。

 電子脳の故障で、弁当を注文したのに枕や動物が届く場面では「自動式だけでなく、手動式も大事なことなのだ。自分の頭で考え、自分の足で歩き、自分の手で作り、運び、自分の力でやってみることの必要は、今でもどんなに進歩した未来でも、同じことだと、いっているようだ」と感想を述べ、「ぼくの考え、ぼくの心はいつまでも、ぼくのものでありたい」と結んでいる。


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