ノーベル化学賞に田中氏(富山市出身) 目次へ >>ホームへ
祝福に満面の笑み 近畿県人会が特別招待 2002.10.14
 古里の人々に祝福されて、満面の笑み。ノーベル化学賞受賞が決まった田中耕一さん(43)=富山市新川原町出身=は13日、京都市内のホテルで開かれた「近畿富山県人会総会」に特別招待され、関西を拠点に活躍している県人約700人と初めて顔を合わせた。割れんばかりの拍手で祝福を受けた田中さんは、1人ひとりに向かって小さく会釈。富山が生んだ超一流の化学者に、中沖知事らが「県民に夢と希望を与えた」と花束を贈った。飾らず、親しみ深い人柄にふれた県人たちに、世代を超えた喜びが広がった。

 午前10時半すぎ。田中さんは、妻の裕子さん(37)とともに会場入り。「おめでとう」「富山の誇りだ」と次々に声が掛かった。一躍「時の人」になった県人をカメラに収めようとする人でごった返した。

 総会に先立ち、来賓として出席した中沖知事が「43歳という若さで世界最高の栄誉に輝く快挙を果たした。県民や若者に大きな希望と夢を与え、全国の研究者の励みとなった。近畿県人会、県民、富山市民を代表して、心から受賞をお祝いしたい」と述べた。

 「田中先生」と紹介されると「先生ではない」というように手を振って否定し、素朴な人柄で会場を沸かせた。田中さんが「富山県人の『粘り強さ』が受賞につながる要因になった」と話すと、ひときわ大きな拍手が起こった。

 知事や森富山市長、竹内県議会議長、黒田近畿富山県人会長から花束と記念品が贈られると、1回1回小さな声で「ありがとうございます」と繰り返し、どちらが受賞者か分からないほどの「腰の低さ」。

 わずか10分程度の出席だったが、退席を見送る人にも小さく頭を下げて応えるなど、周囲を気遣った。幹事長の桑田英治さん(69)は「田中さんの心が今も富山にあるからこそ、忙しい合間を縫って来てくれたのだろう。本当に感激した」と喜んでいた。
中沖知事から花束を受ける田中さん
中沖知事(中央右)から花束を受ける田中さん。左端は妻の裕子さん=京都市内のホテル

表情豊かに足跡紹介 県人会会場で報道写真展 2002.10.14
 田中耕一さんのノーベル化学賞受賞決定後の様子を伝える報道写真が13日、京都市内のホテルで開かれた近畿富山県人会総会の会場内に展示された。表情豊かな写真を前に、久々に会った総会出席者たちがあいさつも忘れ「偉大な県人」の話題で盛り上がった。

 写真は北日本新聞社と共同通信社、田中さんの家族が提供した16点。アメリカ研修時代のスナップや受賞決定の喜びを語る会見の様子、富山市内で受賞を知った妻裕子さんや恩師の喜びの表情もあり、故郷の祝福ムードが伝わる。

 兵庫県尼崎市の会社員、上田彦次さん(67)=利賀村出身=は「県人として誇らしい。関西に来て50年たつが、こんなにうれしいことは初めて」と興奮気味。田中さんと同じ芝園中、富山中部高校と進んだ大阪府池田市の主婦、杉田絵巳子さん(61)=富山市出身=は「すごい後輩ができて喜んでいる。若い人たちにも素晴らしい目標となる」と話し、田中さんの足跡に見入っていた。写真と一緒に記念撮影する姿も見られた。
報道写真に見入る県人会総会の出席者
田中さんの表情を伝える報道写真に見入る県人会総会の出席者=京都市内のホテル

興味あることに猪突猛進 妻が語る夫の素顔 2002.10.14
 「優しくて思いやりがあって、興味があることには猪突(ちょとつ)猛進」−。ノーベル賞を射止めた田中耕一さんの妻、裕子さん(37)はそう夫を語る。職場での行動力とは裏腹に、家では「ぽぉーっとしてることが多い」という。仕事から解放され、リラックスできる温かい家庭を裕子さんの笑顔がつくる。

 結婚7年目。夫婦の会話は仕事抜きの世間話が中心だ。「家では無口な方」の夫は妻の話を「ウン」「ウン」と聞く。時々、飛び出す夫の冗談に裕子さんは「笑えたり、ちょっと考えたり…。会社でも言ってるんじゃないでしょうか」と苦笑い。

 裕子さんは「いつも笑顔で」と心掛ける。疲れた顔で職場から帰宅することもある。「こちらが気を遣うと、逆に気を遣わせてしまうので…。普通に接します」。裕子さんが体調を崩せば、「おれのことは気にしないで」と耕一さん。思いやりが互いを支える。

 裕子さん手作りの夕食は健康を気遣って「たくさんの食材を少しずつ」。ある日のメニューはサツマイモやニンジン、シメジ、ゴボウ、ネギの入った具だくさんのみそ汁と刺身、煮物、季節の果物。耕一さんはおいしく食べてくれるという。

 誕生日などの記念日に贈り物の交換はしない2人。だが、5年目の結婚記念日だけは違った。

 裕子さんは突然、ガラス製の鳥の置物を贈られた。手のひらに乗る小さなプレゼントは以前、裕子さんが「かわいいね」と店先で見ていたもの。「記念日の贈り物はそれきりですが。思いがけなくて…」。笑みがこぼれる。英国に2年間の単身赴任中、妻からの手紙を大切にした夫。きれいに保管されていた手紙を見た時もうれしかった。

 夫の受賞に、まだ実感がわかないという裕子さん。これからも2人とも普段通りでいたいと言う。「主人は一歩一歩の積み重ね、1日1日を大事にという人。わたしも同じです。似た所と、逆の部分とがあって、うまくいってるんじゃないでしょうか」。言葉を探しながら話す姿に、誠実さがにじんだ。
喜びをかみしめる田中さん(左)と妻の裕子さん
喜びをかみしめる田中さん(左)と妻の裕子さん


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