地域とともに、地域のために
北日本新聞の源流となる「中越新聞」が誕生したのは、富山県が石川県から分かれた翌年、1884(明治17)年のことでした。分県運動に携わった創設者が、その経験から広く県民に言論を提供する必要性を感じ、発刊に至ったといいます。
それから140年以上にわたり、私たちは市民運動の先駆けともされる米騒動や富山大空襲、高度経済成長の光と影など、それぞれの時代の実相を見つめ、課題を探り、地域の皆さまと喜怒哀楽を共にしながら歩んでまいりました。政務活動費の不正追及を端緒に、議会のあるべき姿を訴えたキャンペーン報道「民意と歩む」は、こうした私たちの姿勢を象徴するものであり、一連の報道が2017年度の新聞協会賞に選ばれたことは、大きな励みとなっています。
社会は今、激しく揺れ動いています。相次ぐ自然災害、急速な少子高齢化やデジタル技術の進展、世界に目を向ければ排他的なナショナリズムが台頭し、戦禍は絶えません。先が見通せない時代の中で、私たちは県民、読者の皆さまの「知る権利」に応え続けるためにどうあるべきか。自らに問いかけ、新たな挑戦を始めています。
2023年に創刊した総合情報サイト「webunプラス」では、事件・事故や災害情報の速報体制を強化し、動画も積極的に取り入れるなど、デジタルメディアならではの可能性に挑んでいます。新聞掲載記事に加え、記者それぞれの視点を生かしたウェブオリジナル記事や富山の暮らし・子育て情報を充実させ、地域の魅力を多角的に発信しています。
2025年元日には「北日本新聞社DEI宣言」を公表しました。DEIは多様性、公平性、包括性を意味する英単語の頭文字をとったもので、共生社会の実現に欠かせない考え方です。まず私たち自身が多様性を受け入れ、互いを敬い、高め合う組織になっていく。その過程で育まれた意識が、報道をはじめとする企業活動を通して地域の皆さまに伝わり、誰もが暮らしやすく、温かなつながりの感じられる社会の実現に寄与することを願っています。
時代が変わろうとも、変わらないもの。私たちにとってそれは、地域とともに歩み、地域のために貢献するという理念です。これからも皆さまのさらなる信頼と共感を得られるよう、挑戦を続けてまいります。
北日本新聞社
代表取締役社長 蒲地 誠
